#1. An icy girl




物心つく前から、ユーレイが視えた。

勿論、それが生きてはいない、いわゆる人外だと言うことは百も承知である。

だからこそ、ユーレイが視えたと言える。

銀色の髪に翡翠色の瞳。

こんな容姿に生まれたせいだろうか。

私には、家族と呼べる人はいない。

生まれたときから、今に至っても。

両親は日本人で一般的な黒髪に黒目だった。

私もそう生まれれば良かったものを、敢えなく違った。

銀色の髪に翡翠色の瞳。

それを知ったとき、両親は離れた。

サイバンを起こした。

ケンサされた。

そして


私と両親は赤の他人だった。


あれから両親に会っていない。

捨てられた。

どちらに引き取られることもなく。

孤児院に入れられることもなく。

かつて“家族”があったこの家で、ずっと一人で生きている。

数分しか見ることのなかった親の顔は、いつしか記憶から消え去った。

外に出るつもりない。

出たらみんなが私を怖がる。

みんなが私を「氷のようだ」と言う。

銀色の髪に翡翠色の瞳。

世界は私を受け入れなかった。

寂しいとは思わなかった。

寂しいと思ったことはなかった。

隣を見れば、当たり前のようにユーレイ(彼ら)がいたから。

そんなある日、近くの空き地で夜中遊んでいた私は、“彼”と出会った。

銀色の髪に翡翠色の瞳。

歳も身長も性別も“人か”も違う私たちは、お互いよく似ていた。

1ヶ月。

長いようで短いような期間、私たちは夜の空き地で遊んだ。

初めて人と触れあって、とても楽しかった。

だから、ある日突然彼が姿を現さなくなってからは、とても寂しかった。

初めて、ようやく、私は寂しいと言う感情を知った。

きっとまた会える。

そう信じた私は、何度も何度も何度も何度も何度も空き地に足を運んだ。

もう二度と会えないと心ではわかっていたのに。

だけど信じ続けた。

いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…………。








「お腹、減ったなァ」








覚えているのは、白い仮面と紅い血飛沫。

痛みも、恐怖もなかった。

何も、なかった。

気づいたときにはもう、すべてが闇に包まれていた。


そして私は、


知らない草原で目を覚ました。




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