俺とバカと転生世界 | ナノ
俺とバカと転生世界
第三問
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英語
次の英文を和訳しなさい。
[This is the bookself that my grandmother had used regularly.]
姫路瑞希の答え
[これは私の祖母が愛用していた本棚です]
教師のコメント
正解です。きちんと勉強していますね。
藍川瀬名の答え
[これは私のおばあちゃんが愛用していた本棚です]
教師のコメント
正解ですが、テストでは“祖母”と訳すようにしましょう。
土屋康太の答え
[これは ]
教師のコメント
訳せたのはThisだけですか。
吉井明久の答え
[☆●◆▽┓♪*×]
教師のコメント
できれば地球上の言語で。
☆
Aクラスへの宣戦布告。
それはこのFクラスにとっては現実味の乏しい提案にしか思えないものだ。
『勝てるわけがない』
『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』
『姫路さんがいれば何も要らない』
悲鳴が教室のいたるところから上がる。
確かにAクラスを相手にしてしまっては、いくら俺や姫路がいるからといってこのFクラスに勝ち目はない。
文月学園に点数の上限がないテストが採用されてから4年が経過した。
ここのテストは一風変わっていて、1時間と言う制限時間と無制限の問題が用意される。その為に、テストの点数には上限がなく、能力次第ではどこまでも成績を伸ばすことができる。それこそAクラスとFクラスは天と地ほどの差がある。
それに加えて、科学とオカルトと偶然により産み出された“試験召喚システム”なるものがある。これはテストの点数に応じた強さを持つ“召喚獣”を喚び出して戦うことのできるシステムで、教師の立ち会いの下でのみ行使が可能となる。
学力低下が嘆かれる昨今に生徒の勉強に対するモチベーションを高めるために提案された先進的な試み。その中心にあるのが今回やろうとしている、召喚獣を用いたクラス単位の戦争――試験召喚戦争と呼ばれる戦い。
そこで重要となるのが俺たち生徒の点数なんだけれど、先述の通り、AクラスとFクラスは文字通り桁が違う。正面でやりあった場合、Aクラス一人に対してFクラス三人でも勝てるかどうか。もちろん俺と姫路を考えなかった場合だけれど。
「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」
クラスメイト達の不満を聞き、分かりきっている圧倒的な差を知りながらも、雄二はそう宣言した。
『何を馬鹿なことを』
『できるわけないだろう』
『何の根拠があってそんなことを』
当たり前のことだけど、否定的な意見が飛び交う。
「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」
雄二の言う通り、このクラスならではの人材がある。それは、去年一年間共に過ごしたからこそわかるもの。
「それを今から説明してやる」
いつものように得意の不敵な笑みを浮かべて、雄二は教壇から俺たちを見下ろす。
「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」
「…………!!(ブンブン)」
「は、はわっ」
必死になって顔と手を左右に振り否定のポーズを取る康太。
姫路がスカートの裾を押さえて遠ざかると、アイツは顔についた畳の跡を隠しながら壇上へと歩き出した。
全く相変わらずだな。
「土屋康太。こいつがあの有名な、寡黙なる性識者だ」
「…………!!(ブンブン)」
土屋康太と言う名前はそこまで有名ではない。けれどムッツリーニとなれば話は別だ。誰がつけたのか知らないけど、その呼び名は男子の間では畏怖と畏敬を、女子の間では軽蔑を以て挙げられる。
俺からすれば、ただのあだ名だけどね。
『ムッツリーニだと……?』
『馬鹿な、ヤツがそうだと言うのか……?』
『だが見ろ。明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……』
『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……』
たとえどういった状況であろうとも、下心は隠し続ける。その異名は伊達じゃない。
「???」
「姫路、彼はただのムッツリスケベと覚えておいて構わないよ」
「あ、はい。わかりました」
頭に多数の疑問符を浮かべている姫路には、俺が説明をつけておく。
「姫路のことは説明する必要はないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」
「えっ? わ、私ですかっ?」
「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」
『そうだ。俺たちには姫路さんがいるんだった』
「坂本。藍川のことはいいの?」
盛り上がったところに口を挟んだのは、またもや島田。
『そう言えば藍川って何者だ?』
『すごいやつなのか?』
「そう、だな。はっきり言ってセナは別格だ」
雄二が苦虫を噛み潰したような顔になる。別に、話したくないなら話さなくていいんだけどな。
「最凶の風紀委員長。知らないやつはいないだろう」
『最凶の……まさか』
『あの、藍川瀬名か!?』
はあーあ、変な覚え方されちゃったみたいだね。確かに嘘は言ってないけどさ。
「類い稀なる頭脳と負けなしの喧嘩で中学を支配していた、鬼才」
「人聞きの悪い。俺はただ、校則違反者を徹底的に排除したまでさ」
「同じだろ」
いや、違うね。俺は暴力に訴えて支配したんじゃなくて、支配下での違反者に鉄槌を下しただけだ。
「それに、木下秀吉だっている」
秀吉か。学力方面で名を知る人はいないけど、別のことでは有名だ。演劇部のホープだとか、双子の姉の優子だとか。確か優子はAクラスだったな。
「当然俺も全力を尽くす」
『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれてなかったか?』
『それじゃあ、振り分け試験の時はやっぱり体調不良だったのか』
『実力はAクラスレベルが三人もいるってことだよな!』
かく言う雄二も頭が切れる奴だ。なんと言っても頭の回転が速い。
次々と現れる実力者に、クラスの士気は確実に上がっていた。
「吉井明久だっている」
……シン――
そして一気に下がる。
なるほど、明久の名前はオチ扱いか。
「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を出すのさ! 全くそんな必要はないよね!」
『誰だよ、吉井明久って』
『聞いたことないぞ』
「ホラ! 折角上がりかけてた士気に翳りが見えてるし! 僕は雄二たちとは違って普通の人間なんだから、普通の扱いを――って、いてててっ瀬名なんでつねるの? 士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」
雄二がなんで明久の名前を出したのか、予想はできている。けど、それは禁句だ。
「そうか。知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは《観察処分者》だ」
あーあ、言っちゃったね。
『……それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?』
ほら、タブーが出ちゃった。
彼にはどんなお仕置きをしてあげようかな。
「ち、違うよっ! ちょっとお茶目な16歳につけられる愛称で」
「そうだ。バカの代名詞だ」
「肯定するな、バカ雄二!」
《観察処分者》。いくぶん学生生活を営む上で問題のある生徒に課せられる処分の名称。確かにバカの代名詞であることは否定しないけどさ、
「あまりその発言はよろしくないかな、バカ雄二」
さすがに我慢の限界である俺は、ついに口を挟んだ。
「どうしたセナ。お前が明久を庇うなんて珍しいんじゃないか?」
「違うね、決して明久をかばう訳じゃない。俺が言いたいのは、俺も《観察処分者》をもらってるってことだ」
『は?』
クラスから上げられた疑問詞。それは明久や雄二を始めとする去年のクラスメイトでさえ知らない事実。
「で、でもなんで瀬名まで?」
「さあ何でだろうね」
本当は俺が自ら鉄人に頼んだんだけどね。本来ならば成績のよろしくない生徒がするべきものだから、学園長から二つ返事で許可をもらった。
その本心は、単純に召喚獣の扱いに慣れておきたかっただけ。俺だから許可がもらえたようなものだね。
「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路が首を傾げている。
「具体的に言えば、教師の雑用さ。力仕事等の雑用を、特例として物に触れるようになった試験召喚獣でこなすものだよ」
そう。本来試験召喚獣は物に触れることのできない、言わば幽霊のようなもの。
しかし俺と明久のそれは違い、それが可能となった特別製。
「そうなんですか? それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことができるなら便利ですよね」
「あはは。そんな大したもんじゃないよ。先生がいないと召喚獣を出せないし、負担の何割かは召喚者に返ってくるし」
『おいおい。要するに、召喚戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』
「フィードバック? そんなもの俺にはないけど」
学園長は俺の“秘密”知ってるしね。これくらいは当然でしょ。
『それならおいそれと召喚できない奴が一人いるってことになるよな』
明久の顔が、“バレた”とでも言いたげな表情になる。
「気にするな。どうせいてもいなくても同じような雑魚だ」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」
「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
「うわ、すっごい大胆に無視された!」
諦めなよ明久。雄二は元々そういうやつなんだからさ。
「みんな、この境遇には大いに不満だろう?」
『当然だ!!』
「ならば全員ペンを執れ! 出陣の準備だ!」
『おおーーっ!!』
「俺達に必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおおーーっ!!』
「お、おー……」
クラスの雰囲気に圧倒されてか、姫路も小さく拳を作り掲げていた。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
と、ここで雄二から明久への地獄の通達。
「……下位勢力の宣戦布告の使者って大抵酷い目に遭うよね」
「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない」
「そうだね明久。雄二の言う通りだと思うよ」
「本当に?」
「「もちろんだ」」
「心配しなくても、俺は幼馴染みを騙すような真似はしないさ」
いや、ごめん。すっごい勢いで騙してるよ今。それを信じるか否かはお前次第だけど。
「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
「ああ、頼んだぞ」
クラスメイトの歓声と拍手で送り出し、明久は使者らしく毅然とした態度でDクラスに向かって歩き始めた。
☆
「騙されたぁっ!」
教室に転がり込んできた明久。
息を切らせてへたり込む明久に俺と雄二は視線を落とし、
「やはりそう来たか」
「予想通りだね」
平然と言い放った。
「やはりってなんだよ雄二! て言うか瀬名も予想してたんじゃないか!」
噛みつきに来た明久を雄二と同時に足蹴りにし、その辺に転がす。
「それじゃ、今からミーティングを行う。屋上に集まれ」
雄二が扉を開けて外に出ていく。その後ろを姫路が小走りに追う。
秀吉も、明久に労いの言葉をかけてから廊下に出た。
「…………(サスサス)」
自分の頬の辺りをさすりながらムッツリーニも続く。
「ムッツリーニ。覗いていたときの畳の跡ならもう消えてるよ?」
「…………!!(ブンブン)」
「いや、今更否定されても、ムッツリーニがHなのは知ってるから」
「…………!!(ブンブン)」
「ここまでバレてるのに否定し続けるなんて、ある意味すごいと思う」
「…………!!(ブンブン)」
「――何色だった?」
「みずいろ」
即答!?
「やっぱりムッツリーニは色々な意味で凄いよ」
「…………!!(ブンブン)」
「今度、僕にも覗き方を首の骨が折れるぅぅっっ!!」
「いつまでへらず口叩いてるの? 一度ぶち殺されたい?」
一回こいつの大切なものを全部燃やしてみようかな。
そうやって喋っていると、
「ほら吉井、藍川、土屋。アンタ達も来るの」
島田がやって来て明久の腕を引っ張った。
「あー、はいはい」
「返事は一回!」
「へーい」
「……一度、Das Brechen――ええと、日本語だと……」
島田が言いよどむ。
確かその単語はドイツ語で、
「…………調教」
俺が答える前にムッツリーニが答える。
「そう。調教の必要がありそうね」
「調教って。せめて教育とか指導って言ってくれない?」
「じゃ、中間をとってZuchtigung――」
「…………それはわからない」
「折檻だよ」
今度は俺が答える。
「それ悪化してるよね」
「そう?」
帰国子女であるが故に漢字が読めない島田だが、余計な単語は知ってるらしい。
「と言うか瀬名はともかく、ムッツリーニ。どうして“調教”なんてドイツ語を知ってるの?」
「…………一般教養」
そんなことを教える家庭は普通ないと思うけど。
「相変わらずムッツリーニは性に関する知識だけずば抜けてるね」
「…………!!(ブンブン)」
そんな会話をしながら校内を歩いていると、先頭の雄二が屋上に通じる扉を開けて太陽の下に出た。
雲1つない空から眩しい光が差し込む。
春風と共に訪れた陽光に、風ではためく姫路のスカートを注視しているムッツリーニを除いて、俺らは全員目を細めた。
「明久。宣戦布告はしてきたな?」
雄二がフェンスの前にある段差に腰を下ろす。
「一応今日の午後に開戦予定と告げてきたけど」
それにならって俺らも各々腰を下ろす。
「それじゃ、先にお昼ご飯ってことね?」
「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいはまともな物を食べろよ?」
「そう思うならパンでも奢って頭に穴が開くっ!」
「俺が昨日分けた野菜はどうしたんだい?」
「そんなもの捨てたに決まって嘘です! ごめんなさいぃっ!」
折角人が分けてやった食材を無駄にするなんてね。大切なものを全部燃やすだけじゃたりない気がするな。
「えっ? 吉井くんってお昼食べない人なんですか?」
「いや、一応食べてるよ」
「……あれは食べてると言えるのか?」
雄二の横槍が入る。
「何が言いたいのさ」
「いや、お前の主食って――水と塩だろう?」
その声色はかなり哀れんでいた。
「きちんと砂糖だって食べているさ」
「あの吉井くん。水と塩と砂糖は食べるとは言いませんよ……」
「舐める、が表現としては正解じゃろうな」
「だって1年前に瀬名が“水と塩と砂糖でも食べてれば”って」
「だからと言って1年間それで過ごすほどバカだとは思わなかったよ」
確かに言ったけど、あれは明久が悪いしね。
「ま、飯代まで遊びに使い込むお前が悪いんだよな」
「し、仕送りが少ないんだよ」
「今度お母さんに電話してお前の分の仕送りを全額俺の口座に入るようにしてもらうよ。そして必要な分だけお前に渡す」
「僕の宝物がぁっ!」
「余った分は俺の懐行き」
「お主も鬼畜じゃの」
「現状を見なよ」
「藍川も苦労人ね……」
「……あの、良かったら私がお弁当を作ってきましょうか?」
「「ゑ?」」
気のせいだろうか。たった今、明久にとっては優しいであろうけど俺にとっては天国への扉が聞こえた気がする。
「本当にいいの? 僕、塩と砂糖以外のものを食べるのなんて久しぶりだよ!」
「お前がちゃんとしないからだよっ」
「はい。明日のお昼でよければ」
「良かったじゃないか明久。手作り弁当だぞ?」
「うん!」
雄二の台詞がからかいのものだと気づかずに、素直に喜ぶ明久。
俺は、あれについては黙っておくべきだろう。
「……ふーん。瑞希って随分優しいんだね。吉井だけに作ってくるなんて」
そのやり取りが気に入らないのか島田が面白くないように言葉を投げる。
「あ、いえ! その、皆さんにも……」
「俺達にも? いいのか?」
「はい。嫌じゃなかったら」
嫌です、とは口が裂けてもここでは言えない。
「それは楽しみじゃのう」
「…………(コクコク)」
「……お手並み拝見ね」
姫路本人を含めて七人分。嫌々ながらに黙っているが故に、俺も含まれる。
「姫路さんって優しいね」
「そ、そんな……」
「今だから言うけど、僕、ハジメテ会う前から君のことが好き――」
「おい明久。今振られると弁当の話はなくなるぞ」
「――にしたいと思ってました」
一瞬の判断で失恋回避に漕ぎ着ける。けどこの言い方じゃ、
「明久。それでは欲望をカミングアウトした、ただの変態じゃぞ」
となる。
「お前はたまに俺の想像を越えた人間になるときがあるな」
「だって……お弁当が……」
「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」
ああ。そう言えばそうだったね。すっかり忘れていたよ。
「雄二。1つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ? 段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」
「そう言えば、確かにそうですね」
「まあな。考えがあってのことだ」
雄二が鷹揚にうなずく。
「色々と理由はあるんだが、とりあえずEクラスを攻めない理由は簡単だ。戦うまでもない相手だからな」
「え? でも、僕らよりはクラスが上だよ?」
「確かに、成績でクラスを振り分けている訳だから、Eクラスは当然Fクラスより試験の点数は良い。けれどあくまでその時点はだよ。偶然ヤマが当たったり得意教科が出れば言い点数がとれるに決まってるさ」
「セナの言う通りだ。明久。お前の周りにいる面子をよく見てみろ」
「えーっと……」
唸りながら俺達を見回す明久。
「美少女が二人と馬鹿が三人とムッツリが一人いるね」
「誰が美少女だと!?」
「ええっ!? 雄二が美少女に反応するの!?」
まさか、こいつ……
「なんで瀬名も顔赤らめてんの!?」
「…………(ポッ)」
「ムッツリーニまで!? どうしよう、僕だけじゃツッコミ切れない!」
「まあまあ。落ち着くのじゃ、代表に瀬名にムッツリーニ」
「そ、そうだな」
ああ、なるほど。
「美少女って秀吉か」
「瀬名まで酷いのじゃ!?」
「いや、俺じゃなくて明久だよ」
恐らく、明久の言う美少女は姫路と秀吉だろうね。
「ま、要するにだ」
コホン、と咳払いをして雄二が説明を再開する。
「姫路やセナに問題がない今は、正面からやりあってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味がないってことだ」
「? それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」
「ああ。Eクラスのようなマグレ組とは違うからな」
「だったら、最初からAクラスに挑もうよ」
「初陣だからな。派手にやって今後の景気付けにしたいだろ? それにさっき言いかけた打倒Aクラスの作戦に必要なプロセスだしな」
「あ、あの!」
姫路が珍しく大きい声を出す。
「ん? どうした姫路」
「えっと、その。さっき言いかけたって……吉井くんと坂本くんは、前から試召戦争について話し合ってたんですか?」
「厳密にはセナもいたがな。姫路のためにって明久に相談されて――」
「それはそうと!」
雄二の台詞を遮ろうと、今度は明久が大きな声を出す。
「さっきの話、Dクラスに勝てなかったら意味がないよ」
「負けるわけないさ」
明久の心配を笑い飛ばす雄二。
「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる。いいか、お前ら。ウチのクラスは――最強だ」
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