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第一問

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化学

『調理のために火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を1つ挙げなさい』


姫路瑞希の答え
『問題点…マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応するため危険である点。
 合金の例…ジュラルミン』

教師のコメント
 正解です。合金なので“鉄”では駄目と言う引っかけ問題なのですが、姫路さんは引っ掛かりませんでしたね。


藍川瀬名の答え
『問題点…マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応する。この時、白銀の炎が上がり、綺麗すぎて料理がそっちのけになるため危険である点。
 合金の例…ジュラルミン』

教師のコメント
 余計な回答がついているのは気のせいでしょうか? 炎が綺麗なのは同意しますが、料理をそっちのけにする以前の問題です。


土屋康太の答え
『問題点…ガス代を払っていなかったこと』

教師のコメント
 藍川くん以上に的外れな回答ですね。


吉井明久の答え
『合金の例…未来合金(←すごく強い)』

教師のコメント
 すごく強いと言われましても。





 俺がこの文月学園に入学してから2度目の春が訪れた。
 校舎へと続く坂道の両脇には新入生を迎えるための桜が咲き誇っている。
 けどオレはそれよりクラスのことで頭がいっぱいになっていた。





「藍川、遅刻だぞ」

 昇降口の前でドスの聞いた声に呼び止められる。

「ああ、鉄人。どもっす」

 俺はそんな彼に軽く頭を下げて挨拶する。

「その呼び方を直す気はないのか」
「そんな気があるように見えたら心外だね」

 教師にため口だが、これは俺だけに許された特権。と言うよりはそれほどの仲と言うだけ。

「で? お前が遅刻だなんて珍しいじゃないか。幼馴染みはもう来てるぞ」
「深夜アニメを見ていた」
「その時間を睡眠に当てれば間に合ったんじゃないか?」
「そんな気があるように見えたら心外だね」
「それがないから不思議なもんだ。ほら、受け取れ」

 鉄人が箱から封筒を取り出し、俺に差し出す。宛名の欄には“藍川瀬名”と、書いてあった。

「どうも」

 この封筒の中には、昨年末に行われた振り分け試験の結果が入っている。
 もっとも優秀なクラスをAとして、AからFまで分かれている。

「それにしても、何でこんな面倒なやり方でのクラス発表なんすか? 掲示板とか使えばいいじゃないか」
「お前の幼馴染みにも同じことを言われたな」

 同じこと? 彼と思考回路が似ているだなんて心外だね。

「まあ、ウチは世界的にも注目されてる最先端システムを導入した試験校だからな」
「単純明快だね」

 少し緊張しながら封に手をかける。正直なところ、俺は振り分け試験の日のことを覚えていない。

「藍川、今だから言うがな」
「改まって何の用?」
「俺はお前を去年1年見てきて、“藍川ほどこの学校のイメージUPに最適な生徒はいないんじゃないか?”と思っていた」
「どうも」

 成績優秀運動抜群生活態度良好。それが俺に張られたレッテル。
 それにしてもこの封は開きづらいね。上の方を破ってしまおうか。

「だからこそ言わせてもらう」

 やっと開いた。
 中から三つ折の紙を取り出して開くと、

『藍川瀬名……Fクラス』
「お前に何があった」

 かくして、俺の最低クラスでの生活が始まった。



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