幼少編(イタリア)



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揺りかご

XANXUS率いるヴァリアーが起こしたあのクーデターを、人々はそう呼ぶようになった。

事件は『XANXUSと9代目の親子喧嘩』として処理され、真相を知るものはごく一部。

あれから、2年の月日が流れた。

しかし、心の傷を癒すのにはとても短い。

ヴァリアー内の空気は、何一つ変わっていなかった。

その中でも特に異常だったのは…

ベル「なぁ姫?」

美鈴「…」

ベル「ひーめー」

美鈴「…」

ベル「聞こえてるー?」

美鈴「…」

美鈴だった。

ベル「? なあ、最近姫の反応がないんだけど」

ルッスーリア「え?」

マーモン「ム?」

スクアーロ「なぬ? 死んで」

ベル「ねぇから」

ルッスーリア「そう言えば、ご飯に対する反応も鈍いわね」

マーモン「言われてみれば。ちょっと美鈴」

美鈴「…」

ルッスーリア「美鈴ちゃん?」

美鈴「…」

レヴィ「おい」

美鈴「…」

スクアーロ「ゔお゙ぉぃ!! 美鈴ぇ!!」

美鈴「…」

ベル「スクアーロの声にも反応しねぇし」

マーモン「何があったんだい?」

ルッスーリア「心当たりは?」

ベル「あるわけねえだろ。おい、姫!」

思わず強めに方を叩く。

美鈴「わひゃあ!!!!」

全員「!!??」

美鈴「あ、ベル兄。おはよ」

ベル「おはよ、じゃねぇよ。何回呼んだと思ってんだ」

マーモン「スクアーロの声にも反応しないなんて、どうしたんだい?」

ルッスーリア「そうよぉ、ボーッとしちゃって」

美鈴「え、ああ、ごめん。考え事してた」

マーモン「ここ最近ずっとかい?」

美鈴「うん」

ルッスーリア「なんについて?」

美鈴「…ボスのこと」

レヴィ「ボス…」

ベル「なんで突然ボスのこと」

美鈴「そんな突然って訳でもないんだ。ただ、正直2年前はあまりのパニックで頭がついていかなかった。何も解らなかった。時が経つにつれて冷静にはなったけど、そしたら疑問が出てきた」

ベル「疑問?」

美鈴「ボスは9代目の息子だった。それなのにあいつはボスを凍らせた! それって…ボスを10代目として認めてない、って、ことだよね」

ルッスーリア「あ…」

ベル「確かに」

マーモン「ム…」

レヴィ「なぜ…」

スクアーロ「(くそ)…」

美鈴「スクアーロ」

スクアーロ「っ、なんだ」

美鈴「ボスの他に10代目候補っているの?」

スクアーロ「ああ。聞いた話じゃ、4人いたはずだ」

美鈴「どんな人?」

スクアーロ「4人中3人は9代目の甥達だ。いずれも年はXANXUSより上だと聞く」

マーモン「あと一人は?」

スクアーロ「門外顧問、沢田家光の息子だ」

ベル「門外顧問の息子!?」

スクアーロ「日本に住んでいて、美鈴と同い年だそうだ」

マーモン「それってつまり、全然子供じゃないか!」

ルッスーリア「どうしてそんな子が候補に…」

美鈴「そっか。ねぇスクアーロ。外出許可ちょうだい」

スクアーロ「何?」

美鈴「私、日本に行く」

レヴィ「何のつもりだ」

美鈴「沢田家光の息子に会いに行く」

ルッスーリア「でも、私たちは活動停止処分中なのよ」

レヴィ「勝手に動いて罪が重くなったら」

美鈴「“ヴァリアーとして”動かなきゃいい話でしょ、要は?」

レヴィ「なんだと?」

美鈴「日本出身の私が、活動停止を機に帰国し、“偶然”沢田家光の息子に出会った。このシナリオならどう思う?」

ベル「へぇ、自分の立場を最大限に利用するつもりか」

美鈴「これならいいでしょ、スクアーロ?」

スクアーロ「……わかった。日本に行くことを許可する」

マーモン「スクアーロ!?」

スクアーロ「ただし、お前一人じゃ行かせない」

美鈴「え?」

スクアーロ「一人で勝手に行って暴走でもしてみろ。そこの町がまた消えるぞ」

美鈴「うっ…」

スクアーロ「ストッパーとして一人同行しろ。ベル」

ベル「オレ!?」

スクアーロ「お前が一番美鈴と年が近いからな」

ベル「あっそ。ま、いいや、行ってみたかったしね」

美鈴「それじゃあ、早いとは思うけど明日にはイタリア出るよ」

スクアーロ「ああ」

ベル「んじゃ、オレも準備してこよっと」

バタンッ

ルッスーリア「スクアーロ、本当にいいの?」

スクアーロ「ヴァリアーとしていたとしても、あいつは何もできないままだ。それに」

マーモン「それに?」

スクアーロ「普通に考えればあの二人は小学生だからな。少し“普通”に生かしてやれ」



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