記憶のあの日
何が起きたのかわからなかった。
希望ヶ峰学園について、校門をくぐって、気付いたら知らない場所にいた。
目の前にあるのはホテルと旅館。
それと、見知らぬ人たち。
いつの間にこんなところに来たのだろうか。
学校は、どうしたのだろうか。
パニックにこそならなかったが不測の事態に頭が追いつかない。
しかしそれも、次の瞬間に全部吹っ飛んだ。
「うぷぷぷ」
そこには、白と黒のトラがいた。
思わずホワイトタイガーとツッコミを入れたけど全く違うことくらいわかってる。
まるでぬいぐるみのような、左右で白黒に分かれたトラ。
「君たちにはコロシアイをしてもらいます!」
唐突に告げられた言葉は理解しがたいものだった。
コロシアイを殺し合いに変換するのに少し時間を要した。
ここは閉ざされた空間。
出たければ誰にもバレずに誰かを殺すこと。
それがコロシアイのルールだと言われた。
バレずに……。
いつだかの、あの無垢な笑顔が見えた気がした。
1度目を閉じてそれを振り払い、これから生活することになる旅館へと、足を向けた。
[
back]