台風のあの日
その日は、数年に一度と言われる記録的な台風が町を襲っていた。
けれどそんなことはお構いなしに、2人で傘も差さずに外をふらついていた。
「ねえ巡、話って何?」
「…………」
いつもの変わらない無垢な笑顔を見せる親友。
これまでに一体何回この笑顔に救われただろうか。
……今となっては、これほど憎いものはなかった。
「ねえ、巡ってば」
「…………さよなら」
「……え……?」
その言葉を最後に、目の前から親友の姿は消えた。
後に残るのは、すべてをかき消すような雨の音と、すべてを飲み込むような暴れ川の音だけだった。
数日後、親友の**が***た。
不思議と涙は流れなかった。
ただただ静かに、いつもと変わらない無垢な笑顔を見つめていた。
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