21、独りぼっちの淋しさ




ちーっす。

現在オレは、近所の公園に来ている。

今日は珍しく非番で、雲雀からの連絡もないし襲撃も全くないから、久しぶりの私服でここにいる。

でもまぁ、非番だからと言ってすることもなく、ベンチに座ってボケーっとしてる他ない。

そんなとき、遠くから軽快なメロディに合わせてこんなのが流れてきた。

『アイスはいりませんか〜。甘くてとろけるアイスはいりませんか〜』

「アイスくださ〜い!」

誰だ、今ドン引きしたやつ。

こう見えてオレ、アイスが大好きなんだぜ?

別に甘党じゃねぇよ?

ケーキだってチーズケーキ以外食えないし、チョコだって嫌いだ。

でもアイスは別だっ!

ダブルサイズのアイスを二つ買い、ふらふらと公園に戻ってきた。

すると、さっきまでオレがいたベンチに、黒髪の女子が座っていた。

んー何か見覚えある気がするけど……誰だっけ?

髪の長さは肩甲骨より下くらいで、雰囲気はフワフワしている。

…………凪じゃん!

「食べるか?」

気づけば左手に持つアイスを差し出していた。



「え? あの……」

突然出されたアイスに戸惑う、凪と思われる少女。

まぁ、普通のリアクションだな。

「ほら、溶けちまうぜ」

「え……? ありがとう……?」

彼女がアイスを受けとるのを確認して、その隣に座る。

「あの……誰?」

「オレは要。霜月要だ。よろしくな」

「要……さん?」

あ〜なんだか癒されるぜ。

凪って半端なく可愛いよな。

食べちゃいt……失礼。

取り乱しました。

「お前は?」

「……凪。三千院凪」

「凪って言うのか。いい名前だな」

取り敢えず、とある漫画のキャラクターとフルネームが一致していることについては、ノーツッコミで行くとしよう。

あと誰だ?

オレの台詞がとあるジ●リ作品のとあるキャラクターの台詞と同じだー何て言ったやつは。

「あの……要さん」

「要でいいぜ」

「え……じゃあ、要?」

「なんだ?」

「どうしてアイスくれたの?」

どうして、か。

よくよく考えれば、原作キャラとは関わらないって決め込んでるんだから、普通だったら公園から出ているはずだ。

でもオレは、そうしないで凪にアイスを渡した。

なんでって……

「凪が、ひとりぼっちだったから、かな」

「え……?」

「なんて言うかさ、こんなに天気がいい日に、一人で公園なんて……オレが言える台詞じゃねぇとは思うが、ひとりぼっちってのは寂しいんじゃないか?」

こんなにいい天気なのに、凪の廻りは雨が降ってるかのように陰ってる。

オレは、自分で望んで一人になったが、他人が一人でいるのは見てられない。

だから、凪に声をかけたのかもしれない。

「えっと……あの、と……友達に、なってくれますか?」

「はい?」

「あっ嫌ならいいの……。ただ、要がよければ……」

「何言ってんだよ。いいに決まってるだろ!」

凪と友達になれるなんて、夢みてぇじゃねぇか。

極秘なんだが、前世のとき、もし会えるならクロームに会いたい、なんて夢があった。

それが、凪と会えるどころか友達だぜ?

「ならさ、メアドの交換とかいいか?」

「うん!」

気づけば、凪の表情も明るくなっていた。

赤外線通信で、交換完了っと。

急いで凪のメアドを、“親友”の欄に入れる。

因みに言っておくと、このグループには、武の名前も入っている。

雲雀は、“風紀委員”。

実は草壁のアドレスも持っていたりする。

そして不本意ながらにも、沢田と獄寺のメアドが入っていて、“クラスメイト”に分類してある。

「いつでもメールくれよな」

「うん。要って、いい人だね」

いい人……か。

そんなこと言ってくれたのは、凪が初めてだな。

前世での唯一無二の親友でさえ言わなかった、否、オレがいつも言っていた。

ま、その話はまた今度にして。

「じゃあな、凪。車に気を付けろよ」

「うん、わかった」

そう言ってオレたちは、いつの間にか夕日に照らされ出した町を、家に向かってあるいた。




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