80、ハーフボンゴレリング
その日、フィリミオを含むヴァリアーの幹部たちは、全員会議室に召集されていた。
彼らが見つめる先、そこには1人の男が鎮座していた。
ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーのボス・XANXUS。
フィリミオはその雰囲気にただならぬものを感じると同時に、彼女の上司である雲雀恭弥と何か似たものを感じていた。
「全員集まったか」
7人と1体の姿を確認すると、彼は低い声で告げた。
そして、1つのそう大きくない箱を取り出した。
箱に刻まれた紋章を見て、誰もが息を飲む。
「ボンゴレの紋章……と言うことは、つまり」
「そうだ。ボンゴレの至宝であり継承の証、ボンゴレリングだ」
場の空気が一気に張り詰めた。
XANXUSが浮かべた笑みは、不敵なものだった。
「これはまだハーフ状態だ。だが、いずれ完成する」
ボンゴレリングがハーフでなく完全になった時……彼はボンゴレの頂点として君臨する。
「ルッスーリアは晴、レヴィは雷、ベルは嵐、スクアーロは雨、マーモンは霧、ゴーラ・モスカは雲だ」
「はあい」
「御意」
「ししっ、りょーかい」
「ああ」
「だろうと思ったよ」
「……」
「フィリミオ、テメェは吹雪、高城が霞だ」
「……わかった」
「はーい!」
これで9つのリングが守護者に行き渡った。
例えハーフでも強い意味を持つボンゴレリング。
各々が感じているものは違うにしろ、それぞれの“何か”を変えるきっかけになっていた。
解散宣言を受けて皆が自室へと引き返す。
同じく部屋に戻ったフィリミオは、配られたリングをじっと見つめていた。
基本的なデザインは他の誰のリングとも変わらない。
しかし半分に割れたマークには、氷の結晶が見てとれた。
「吹雪と霞か」
ふと聞こえてきた声に顔を上げる。
いつ入ったのか、部屋の入り口には彩加が立っていた。
「知ってる? 吹雪と霞の守護者は、元々は双子が担うものだったんだって。けど、そう簡単に双子の守護者が見つかるはずもなくて、いつの間にか“最も仲のいい2人組”に変わっていた」
「吹雪は冬、霞は春の現象……。双子だとか仲良しとか、そんなイメージは全くないけど」
「そうだね。でも冬があるから春は来る。それとね、霞の守護者の別名って、吹雪の守人、なんだって」
自慢げに話す彩加の声は、どこか嬉しさを帯びていた。
吹雪の守人、つまりフィリミオの……要の守人になれると言う立場である霞の守護者。
彩加にとってこれほど嬉しいものはないだろう。
これでやっと胸を張って言える。
要のことを守る、と。
フィリミオはそんな彼女を見て、ただ優しく微笑んだ。
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