69、今日も平凡?並盛中
それは並盛中学校のとある1日。
そして、日常のようで、非日常のような毎日の中の平凡な1日。
その日の放課後、誰もいない教室でツナ達3人は話をしていた。
「ねぇ、山本」
「ん? どうかしたのかツナ?」
「霜月さん、どこに行っちゃったのかな?」
「……オレにもわかんないのな」
ツナのさりげない一言で3人の視線が一つの席に集まった。
いるととてつもなく騒がしいのにいなくなった途端に淋しくなってしまった席。
今やそこは物置同然の状態になっていた。
9月9日。
黒曜ヘルシーランドでの骸との戦いの日を境に、彼女は行方不明となっていた。
初めは、年始の時のように風邪を引いて長期に渡って休んでいるのかと思われていたが、家を訪ねた雲雀によって彼女の不在が明らかになった。
それ以来、誰1人として彼女の姿を見た人はいない。
「そもそもあの日、要は雲雀と一緒にオレたちより先に黒曜に向かったんだよな?」
「うん。やちるちゃんに千鶴ちゃん、それに京子ちゃんや黒川も行くところを見たって言ってる」
「けど黒曜ランドを目の前にして“霜月だけ”が消えていなくなった、って言うのが雲雀の話っすね」
「だな」
忽然として姿を消した要。
その後数日間に及ぶ、雲雀率いる風紀委員の大々的捜索期間があったものだから、この事件を知らないものはいない。
今や七不思議とまで噂されるほどだ。
「そう言えば10代目、数日前に霜月にそっくりの人間を商店街で見たって噂知ってますか?」
ふと、獄寺がそう問いかけた。
ツナが立ち上がった勢いでガタンッと音を立てて椅子が倒れたのを見て、獄寺は慌てて取り繕った。
「け、けど、話によると、同んなじあの髪色なんすけど、あいつに比べてずっと長いし、黒曜中の制服を着ていたらしいですよ」
「長い髪……黒曜中……ああ」
思わずため息をつきながら椅子に座り込んだツナ。
彼にはその人物に心当たりがあった。
いや、むしろその人物以外に当てはまる人がいるとは思えなかった。
「それって多分、霜月さんじゃなくって、フィリミオさんだよ」
「フィリミオ?」
「それはもしかしてリボーンさんが仰っていた、骸の仲間を語って奴を逃し連れて行ったと言うあの!?」
「うん、その人」
それは紛れもなく、フィリミオのことだった。
パッと見ただけでは要と間違ってしまいそうなほど瓜二つで、雰囲気までもが似ている人物。
そして、骸が憑依した際に、唯一骸が餓鬼道を使おうとしなかった人物。
そもそも要とフィリミオは間違いなく同一人物であるのだが、そんなことを彼らが知るはずもない。
だから、気づくこともできない。
「ま、要なら心配ねぇだろ」
「山本?」
「親友の勘ってやつ?」
「ったく、親友って言うほど絡んでねぇじゃねぇか」
「ん、そうだっけか?」
おっかしーな、と首を捻る山本。
その様子を見て、ツナは思わず笑ってしまっていた。
「山本がそう言うなら、なんだか大丈夫かもって思えるね」
ふわりと笑うその笑顔に、二人もつられて笑ってしまっていた。
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