66、ファミリー結成




要がユニを連れて帰って来た翌日、彼女の家には人が集まっていた。

居候しているクローム・ユニ・犬・千種・骸はもちろん、千鶴と正一そして白蘭の総勢8人。

全員が何故集められたのかその理由を知らない。

居候組は「話がある」とだけ言われ、3人は「家に来い」とメールがあっただけなのだ。

「全員揃ったな」

そう声を掛けるのは、何故か学ラン姿の要。

本人曰く、勝負服らしい。

しかし改めて見ると、いくら広めとはいえ9人もいるせいでリビングが果てし無く狭い。

それでもここが一番広い部屋なので仕方なし。

「それで要、話とは一体なんですか? しかもこんな人数を集めて」

少し不機嫌そうに問う骸の言葉に皆が頷く。

ぼちぼち会ったことがある人ない人が集められて気まずい雰囲気なのが正直なのところだ。

特にユニと千鶴に至っては、要以外に知った顔がないのだから気まずいにもほどがある。

「それもそうだが、本題に入る前にまず言っておきたいことがある。ここにいるメンバーは、俺が心から信頼している奴らだってことを覚えておいて欲しい」

「てことは、要チャンは僕のことも信頼してくれてるのかな?」

「正一の親友だしな」

心外だ、とでも言いたげな白蘭であるが、要からすれば彼も充分に信頼するに値する人間だった。

いや、むしろ、初めて会ったあの日、彼から何かを感じていたと言うのが大きいかもしれない。

「はーい、質問!」

ふと千鶴が手を挙げる。

「雲雀と山本はどないすんねや。自分、あいつらとも仲ええんやろ?」

そう言えば、とツッコミが入っても仕方のない質問が飛んで来た。

要は山本と親友であるし、雲雀とも風紀委員を通して色々あったのだから、むしろ千鶴がいる方が謎なのだ。

けれど要はその2人ではなく、千鶴を選んだ。

「恭を入れなかったのは言うまでもなく骸との相性の問題だ。んで武だが、あいつは沢田側の人間だからだ。別にボンゴレの敵になるわけじゃねぇけど、チビ介の介入だけは気に食わねぇからな」

「なるほど……て、ん? ちょい待ちや。自分はこれからなにする気なん?」

納得するかと思いきや、新たな疑問が生まれてしまう。

『沢田側』だの『ボンゴレの敵』だのと何やら不穏な予感のするワードばかりが出てきたのだ。

千鶴でなくても黒曜メンバーは全員気になっていた。

ユニだけは、悲しそうな顔をしていた。

何が起こるのか、要が何をしようとしているのかを全て知っていたから。

それは巫女(シャーマン)としての予知能力ではなく、小屋でのアリアとの会話を聞いてしまっていたが故であった。

「お前らを集めたのはな……オレをボスとしたファミリーを結成するためだ」

『!!?』

ユニを除いた全員の顔に驚愕の色が浮かぶ。

「ファミリーの説明はあえてしない。どうせお前ら全員、どっかでファミリーと関わってるんだろうからな」

今度はユニが驚く番だった。

この場にいるうちの半分は一般人であるはずなのだ。

それなのに要は『全員』関わっていると言い切った。

しかしそれが事実であるかのように、千鶴を含む一般人であるはずのメンバーは目をそらしていた。

「どうやって関わったのかは後々自己紹介でもしてもらうとして。それじゃ、本題に入るぞ」

要がそう言うのと同時に、開けてあった窓から風が吹き込んだ。

思わず目を瞑ってしまった面々が次に見たのは、信じがたい光景だった。

そこにいたのは、エメラルドグリーンの長い紙を靡かせた“フィリミオ”と、その隣に存在する“復讐者(ヴィンディチェ)”。

フィリミオを知る骸以外は彼女の姿に驚き、全員がその隣に恐怖した。

復讐者(ヴィンディチェ)はそんなことはお構いなしに、真っ白の羊皮紙を一枚示した。

「デハ、ココニ誓イヲ立テロ」

「私フィリミオは、ギリビッゾファミリーの結成をここに宣言する」

フィリミオがその羊皮紙に触れた途端、それが炎を上げて燃え出した。

いな、燃え上がったと言うのは正しくない。

正確には、純白の炎に包まれたと言うべきだ。

その炎を見て、全員−−フィリミオと復讐者(ヴィンディチェ)を含む全員が驚きを隠せなかった。

「コノ炎……ヤハリナ」

復讐者(ヴィンディチェ)が呟くがそれに気付くものはいない。

炎が収まった時、真っ白だった羊皮紙には文字が連なり、上部には純白の炎が灯っていた。

死炎印……と骸が呟くと、復讐者(ヴィンディチェ)は静かに頷いた。

「ソレデハコレデ失礼スル。クレグレモ再ビ我々ト顔ヲアワセルコトガナイヨウ」

それだけ言うと、復讐者(ヴィンディチェ)は去って行った。

気づけば、彼女も要へと戻っていた。




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