62、もう一人の大空




Prrr Prrr

ガチャッ

「はい、アリアです。……あら、久しぶりね! 今から? ええ構わないわ。待ってるわね!」




†‡†‡†‡†‡†‡




目の前に広がるのは聖なる森。

ここに来るのは2度目だった気がする。

だいたい半年ぶりくらいになるだろうか。

懐かしさに胸を弾ませながら森に足を踏み入れた。

しかし、

「天気予報のバカやろー!!」

突然の土砂降りに見舞われてしまった。

ついさっきまであんなに気持ちのいい晴天だったと言うのに、一体どこに雨が降る要素があるのやら。

一日晴れると言っていた天気予報を恨みながらもどこか雨宿りができる場所がないものかと探しながら走る。

そんな時だった。

「小屋? あんなところに小屋なんてあったか?」

雨のせいで余計に暗くなった森の中に、小さく明かりの灯った小屋があった。

ちょうどいいと思いながらそこに向かう。

本来ならするべきノックを省略し、小屋の中に走り込んだ。

「っあ〜サイアクだ!」

思わずそう叫んだ時だった。

「誰」

小屋の奥から小さく呟かれた声。

驚いて振り向くと、そこには小さな女の子が立っていた。

その目に怯えの色はない。

何を言おうか迷っている要に、その少女はそっとタオルを差し出した。

「濡れたままでは風邪を引いてしまいます」

「あ、ありがとう」

つい昨日熱を出して倒れたばかりと言うこともあり、おとなしくタオルを受け取る。

髪を拭きながらちらりと少女をみる。

緑がかった黒髪、目の下の花模様、あどけない瞳。

誰かと似ている気がした。

と、その時だった。

「要!?」

小屋のドアが開いた音がしたかと思うと、聞き覚えのある声が聞こえた。

本日2度目の驚きに振り返ると、そこに立っていたのはアリアとコスモだった。

「って、コスモが2人!?」

そこでようやく気付いた。

誰かに似ていると言うのは、アリアに雰囲気が似ていて、何よりコスモと瓜二つだと言うことだった。

驚きを隠せなくなる要に対し、アリアは辛そうな顔を見せた。

仕方ない。

そう言いたげに息をつくと、静かに告げた。

「その子はユニ。私の娘であり、コスモの双子の妹よ」




†‡†‡†‡†‡†‡




暖炉の炎が部屋の中を照らす。

今ここには要とアリアしかいない。

コスモとユニには別室で遊んでもらうことにしたのだ。

「本当なら誰にも言ってはいけない極秘事項なのだけれど、見てしまったのだから要には教えるわね」

紅茶を一口飲んで一息つくと、アリアはぽつりぽつりと話し始めた。

「ユニは、戸籍上では存在しない、γですら存在を知らない掟破りの子なのよ」




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