59、ナチs……言っていいんだっけ?






「来ました、Romanの溢れる国、ドイツ!」

「どうしてロマンだけカッコつけるんですか」

さて、今回やって来たのはくるみ割り人形でもおなじみ、ドイツです。

「待ってなさい、ナチスファミリー!」

「今回のファミリーは、と。ほう、双子の姉妹が有名のようですね」

「ああ、アメイラ姉妹? 確か、姉の方は将来有望な殺し屋で、対する妹は似ても似つかぬ美人のモデル体系なんだよね」

「ええ。では、行きますか」




†‡†‡†‡†‡†‡




「それで、今回の捕獲対象と理由は?」

「対象は、ボスであるヒトラー15世。麻薬の横流しと本人の服用だってさ」

捕獲完了のチェックが多くなったリストを捲りながらフィリミオが答える。

どうやら代々ナチスファミリーのボスは皆、復讐者(ヴィンディチェ)のお世話になっているご様子。

まあ名前からしてもろくなファミリーじゃないことは一目瞭然である。

「そんじゃ、今回もいつも通りにいk「無駄ですよ」……」

突然にセリフを遮った骸。

不服に頬を膨らませるフィリミオだったが、骸の目には若干ながらに畏怖の念が浮かんでいた。

「このファミリーは幻覚の突破口を見つけています。どんな一流の術士でもこのファミリーだけは欺けないでしょう」

「うげ、そんなにヤバいとこだったのかい」

フィリミオはまた、うー……と唸ってしまった。

ゴミ屑ほどにもなった原作知識の中にでさえ、復讐者(ヴィンディチェ)を欺く彼の弟子、フランの姿があると言うのに、まさか骸本人の幻術が効かない日がくるとは思わなかった。

もしここに入江とか白蘭のような楽観的でかつ常に何かを考えてる人間がいればなぁ、なんて思ってしまう。

「よし、変装で行こう。これならそもそも実体だし、何とかなるはず」

「いい作戦、と言いたいところですが、どうやって服を入手するつもりですか」

「私が黒曜中の制服を着ているのと同じ原理、これだよ」

ポケットから、予備として銀からもらっていたブレスを骸に渡す。

フィリミオのは違い、藍と紫の石が連なっている。

「これは?」

「着替え用ブレスレット。世界中の服装が内臓されてるから、ここの制服もあるはず。よっと」

フィリミオがブレスを操作すると、なんだかそれっぽい服装になる。

それを見て骸も、見よう見まねでブレスをいじった。

何度か違う服を経由して、ようやく同じ服に落ち着いた。

「さーて、突入っ!」

「バレないで下さいよ……」

テンションの高いフィリミオと、呆れ&心配顔の骸は、ナチスファミリーのアジトへと足を踏み入れた。

そして、

ヅーッ ヅーッ ヅーッ ヅーッ

警報が鳴った。

『いたぞ、あそこだ!』

『侵入者だ!』

「もー何これー!!(泣)」

侵入早々の追いかけっこが始まった。

あまりの速さに半泣きのフィリミオである。

「仕方ないですね、これで引き離しますよ。第三の道、畜生道」

骸の右目に『三』の文字が現れる。

それと同時に2人と敵との間に大量の毒蛇が出現した。

それは全て敵の方へと向かって行く。

「沖縄に生息するハブですよ。猛毒を持っているのでしばらく戯れていて下さい」

それだけ言い残して、2人はさっさと走り去ってしまった。

残された彼らがどうなったかは、ご想像にお任せします。

あらかた誰もいないところにたどり着き、変装を解く。

あれだけ走った割に息切れを全くしていないあたり、さすがこいつらと言うところである。

「わぉ、骸。どうやら私たちかなりラッキーだよ」

「どういう……ああ、なるほど」

フィリミオが見つけたもの。

それは『Das Zimmer eines Chefs(ボスの部屋)』と書かれた扉だった。

ここまではっきり書いて有ると、分かり易すぎて余計バカみたいに見える。

それはさておき。

「んじゃ、入らせていただきま……!? 霜天氷龍!!」

扉に手をかけたフィリミオだったが、背後に殺気を感じて咄嗟に刀を出した。

その切っ先から氷が噴出し、飛来したものを凍らせる。

「そこまでよ」

「ボスのところへは行かせない」

そこにいたのは、2人の女子だった。

あまり似てはいないが、雰囲気的に双子であるだろうと推測できる。

そして、双子の姉妹と言えば

「私はフィノーレ・(チェル)・アメイラ」

「私はセーシャル・(カル)・アメイラ」

「「あなたたちはここで始末する」」

そう、アメイラ姉妹。

フィノーレの方はブーメランを持っている。

おそらくさっき投げられたのはこれだろう。

対するセーシャルは何も持っている様子はない。

「素手?」

「いいや、私はこれだよ」

ピンッと音がしたかと思うと、直後、骸とフィリミオの間の壁に穴が空いた。

あまりに一瞬のことで、さすがの骸も冷や汗が流れる。

一方のフィリミオは、驚きと喜びが混じった表情をしていた。

そこにはフィリミオではなく、要がいた。

「へぇ、如意珠使いか」

「如意珠を知ってるんだ。あんた何者?」

「何者でもねぇ、ただの中学生だ。復讐者(ヴィンディチェ)の使いのな!」

フィリミオから殺気が放たれる。

それはとても冷たくとても鋭く、周囲の気温を一気に下げた。

その異質な殺気に驚くとともに、アメイラは要の言葉に気づいた。

復讐者(ヴィンディチェ)の使い”と。

「ヴィっ復讐者(ヴィンディチェ)が何の用!?」

「お宅のボスが不正を働いたもんでねぇ」

「嘘だ! ボスはそんな人じゃない!」

フィリミオの言葉を必死に否定するフィノーレ。

しかし、対してセーシャルは何も言えずに顔を青ざめていた。

それを見て要の口元に不気味な弧が描かれる。

強められた殺気によってさらに気温が下がり、周囲のものが徐々に凍り始めていた。

「くぅっ……。誰がなんと言おうとボスは」

「美しいものほど儚く散る」

「!?」

ずっと黙っていた骸が突然に口を開いた。

全員の視線が集まったそこには、信じられない状態が起こっていた。

「そんな! ボス!?」

「いつの間に!?」

骸の腕の中に、ナチスファミリーのボスが捕らえられていた。

喉元に三叉槍の切っ先が突きつけられている。

「君たちがフィリミオに気を取られている間にささっと」

「ボスを返して!」

「離しなさい!」

何とか力づくでも取り返そうと足掻くアメイラだが、実はこの2人、動けなくなっていた。

散々振りまかれたフィリミオの殺気の影響で足が凍りついてしまっていたのだ。

「美しいファミリー愛ですね。しかし先ほど言ったように美しいものほど儚く散る。その意味は僕達が去ればわかるでしょう。行きますよフィリミオ」

「りょーかい♪ じゃ、駄目押しで氷漬けにしてあげる。じゃね、双子の殺し屋さん」

音もなく短刀が2人の目の前に突き出される。

「霜天乱舞」




†‡†‡†‡†‡†‡




「殺しはしないんじゃなかったんですか?」

「殺してなんかないよ。氷漬けにしただけだから、あの2人なら2分で出られる」

「ところでフィリミオ」

「なに?」

「ボロ出しましたね」

「ぎっくー」



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この2人の悪役感がハンパない件について笑




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