57、捕獲開始
《間も無くご到着いたします。ご搭乗ありがとうございました。お忘れ物のございませんよう、お気をつけください》
「やっと着いたぁーっ!」
数時間のフライトを終え、最初の目的地へとやって来た骸と要……否、フィリミオ。
服装はといえば、骸はなぜか黒曜中の制服のままであり、そして更にはなぜかフィリミオまでもが黒曜中の制服を来ている。
骸曰く、気に入ったから。
フィリミオ曰く、なんで自分だけ並中なんだ。
ちなみに、現在地はアメリカ。
子供ですら銃を持つことのできる銃社会であるからこそ、裏はもっと酷いことになっているらしい。
「それで、まず行くべきところはどこですか?」
「えっとねー……一番近いのはこれ。ベルクファミリーってとこ。その次にカッツェファミリーかな?」
「……それはわざとですか?」
「え、何が?」
皆さんはお分かりだろうか。
この二つのファミリーの名前をくっつけてみて欲しい。
とあるアニメの人気敵キャラクターになってしまうのだが……。
わからない人はお父さんかお母さんに聞いてみよう!
「あーはい。理解しました」
「なんだか中二乙な人が集まってそうなファミリーですけど、とにかく行きますか」
「六道輪廻とか言ってるあんたの方が中二乙」
「要!」
騒がしい2人は騒がしいまま空港を後にした。
周りの人の視線?
バラのトゲ以上に刺さりまくってますよ。
本人たちが気づいていないだけで。
†‡†‡†‡†‡†‡
「到着」
「わかってはいたことですが、随分と森が深いですね」
服についた枯れ草を払いながら骸がため息をつく。
その隣でフィリミオはリストをじっと見ていた。
ここに何人捕獲対象がいて、なんで投獄されるのかを確認しているのだ。
「捕獲人数は5人。幹部らしいけど、ボスには内密に核爆弾の製作……ってうわ、サイアク。んで、アメリカで捕まえる奴ら全員これ関係だって」
「核爆弾ですか。全く懲りない輩がいたもんですね」
「ホントだよ。復讐者としてじゃなかったらフルボッコにしてるところだ」
「あなたの場合本当にやりそうですね。それで、どうやって捕まえますか?」
「うん、それなんだけど。ここのボスは穏健派なんだと。だから交渉でどうにかならないかなとね」
「なるほど。しかし、たかが中学生の話に耳を貸すでしょうか」
「それな」
たしかに、マフィアのボスが突然現れた中学生の話を聞くだろうか。
答えはNOである。
そもそもフィリミオに巧みな交渉術など備わっているわけがない。
「でもやっぱり傷つける訳にはいかないから、えーっと……」
「考えてなかったんですか?」
「なくはない。ただ、あまり使いたくない」
「いいから言ってみなさい」
骸が促すと、フィリミオはうーと唸った。
これだけ見てると要とフィリミオが同一人物だと言うことが疑わしくなってくる。
環境、恐るべし。
「骸の幻覚で私たちの姿を隠して、その隙に5人を強制連行。もちろんボスには置き手紙をして。でもこれって無理矢理すぎないかな」
「君はお人好しですか。さっきフルボッコとか言ってたのは何なんですか」
「それはそれ、これはこれ」
「とにかく、方法がそれしかないのならそれで行きますよ」
「はーい」
その刹那、2人の姿がそこから消えた。
その日、アメリカでは行方不明者が出たことは言うまでもない。
しかし裏社会の話なので一般人が知る由もないことも言うまでもない。
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