39、謎の集結率は何なんだよ!?
4月下旬なう。
葉桜なう。
ヒキニートなう。
…………って違うわああぁぁ!!!
誰がヒキニートだ!
風紀委員の仕事がないから私服で家にいるだけだ!!
つーか、今日は凪たちと遊ぶ約束してんだよ!
ピンポーン
お、来たな。
「おはよ、要」
「よっ。上がれよ」
「うん」
凪を家にあげると、いつものようにリビングに通す。
いや、だから、玄関のドアの向こうがリビングなんだってば。
お茶としてはオレの一番押しのプーアル茶を出してもてなす。
「あれ? 入江さんは?」
「もうすぐ来んじゃないか?」
ピンポーン
「お、噂をすれば」
オレは、凪にもう1つ湯飲みを出してもらうように頼み、玄関へ出た。
「よう! 久しぶ……り?」
思わず疑問系になってしまった。
確かに目の前にいるのは正一だ。
問題があるとすれば、その隣に立っている人物だ。
紫がかった白髪に目の下のアザ。
手には500gのマシュマロの袋を持って、その中身を頬張っている。
ん? 見たこと……ある?
「あのさ要、友達が一緒に遊びたいって言うから連れてきちゃった……」
「ああ、そう? 別に構わないんだが……。まぁ上がれよ」
「お邪魔します♪」
そいつは靴を脱いで上がると、律儀にきちんと揃えてからリビングへと入った。
それに倣うように、正一も靴を揃えてから入った。
ただし苦笑しながら。
「わぁ、正チャンが言った通りホントにリビング直結だね♪」
「え、あの? あなたは?」
「悪ぃ凪、先座っててくれ。もう一個はオレが出すから」
「う、うん?」
若干混乱している凪を先に座らせ、急いで湯飲みを1つ追加する。
増やした2つにもお茶をいれ、二人に出した。
これでとりあえずは落ち着いたが、とにかくこいつが気になって仕方がない。
「で?」
「あっうん。この人は白蘭サン。要とで会う前からの仲なんだ」
んー……白蘭?
あるぇ、やっぱりどっかで聞いたことあるな?
もしかしてこれ、原作キャラか?
だとするとどこで出てくるキャラ?
なんかもう、原作知識丸めてポイしたあの日から、本気で思い出せなくなってる。
「君が要チャンと凪チャンだね。よろしく♪」
「うん……よろしく」
「正一の友達、か。よろしく頼むぜ」
ま、今のオレにとっては、白蘭が原作キャラかどうかなんて関係ねぇな。
正一の友達なら、悪い奴じゃないだろうしな。
「なぁ、ケータイ持ってるか?」
「持ってるよ。あ、アドレス交換? いいよ♪」
質問の意味を瞬時に理解したらしく、すぐにズボンからケータイを取り出した白蘭。
オレと凪もそれぞれケータイを取り出した。
うわ、白蘭のケータイ、スマホじゃん。
マジで?
「送信するよー。ピッと」
「おう、サンキュ」
「ありがとう」
それぞれ交換し終えると、白蘭はズボンに凪はハンドバックにケータイをしまった。
オレは普通にテーブルに上に放置だが。
そのあと、することも話すこともなくなり、とりあえずお茶を飲む。
「て言うか待て白蘭。お茶とマシュマロって合うのか?」
「合わないよ」
「じゃあなんで食えんだよ……」
「好きだから!」
……こいつの味覚は大丈夫だろうか。
正一のリアクションを見る限り、どうやら通常運転と言うか、いつも通りらしい。
「そう言えば、白蘭サンはイタリア人なんだよね」
「ん? ほーはほ」
「食ってから喋れ!」
思わず突っ込むと、白蘭は口のなかに詰め込まれたマシュマロを、お茶で流し込んだ。
その場にいた全員がドン引きしたのは言うまでもない。
いや、マジでないって。
「て言うかイタリア人なのか? そのわりには日本語うまいけど」
「そりゃそうだよ。イタリア人ってだけで、生まれも育ちも日本なんだから。あ、でもちゃんとイタリア語も話せるよ♪」
「「へー」」
見事に凪とハモる。
正一は知っていたらしく、ね、みたいな顔をしている。
「甘いもの大好きだから、くれたらなつくかも」
「それは暗にくれと言ってるのか?」
「うん♪」
ですよねー。
ん、甘いもの?
そういえば家にあったようななかったような……。
あ、ラ・ナミモリーヌで買ったチーズケーキと大量のイチゴ牛乳があるじゃん。
思い立ったが吉日。
冷蔵庫にそれを人数分取りに行く。
一人じゃ大変だろうと思ったのか、凪が手伝いに来てくれた。
「よしよし」
「かっ要……!?」
ハッしまった!
あまりに可愛すぎて思わず撫でてしまった!
ごめんよ凪。
「さ、持ってこうぜ」
「うん」
テーブルに四等分にしたチーズケーキと四人分のイチゴ牛乳を置く。
その時の白蘭の目の輝きようと言ったらもう、笑うしかない。
席につくと、パックにストローを指してイチゴ牛乳をのみ始めた。
そしてそれは、ある意味不意打ちだった。
「要チャンと凪チャンってさあ」
笑顔のまま、突然白蘭が口を開いた。
「端から見たらお似合いのカップルだよね」
「ぐふっ。げほっ……ごほっ……」
思いきりむせた。
凪は凪で、顔を赤らめて俯きながらチーズケーキを食べていた。
「てんめぇ」
「あははっ冗談だよ♪」
「白蘭サンが言うと冗談に聞こえないから怖いですよ」
「ん? そう?」
つーかなんだ!?
こいつのオレに対する意識は男なのか女なのかどっちだ!?
女だってわかってる上でこの台詞だったらキレるぞ!?
「あははっだから冗談だってば」
「いや、正直笑えねぇよ……」
白蘭、お前絶対将来大物になるぜ?
トリックスター的な?
いやでも、ホント笑えない冗談だから……。
その日は結局、白蘭に振り回されながらも、のんびりゆったりした時間を過ごした。
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