第六話

「着いたぜ。」

クロウが連れてきてくれたのは海だった。なんで海に連れてきてくれたんだろう?と思ってたけど、水平線の向こうの景色を見たらそんなことはどうでも良くなっていた。

「うわぁ…」

私の眼前にはみたこともないような大きな夕日。とても綺麗で私は感動して言葉が出てこなかった。

「綺麗だろ?仕事してる時にたまたま見つけて、ヒナを連れてきたかったんだ。」
「でも、なんで?」
「なんでって…約束したじゃねぇか。」

クロウは呆れたような、寂しいような。そんな表情をしていた。

「覚えててくれたんだ。」
「俺がヒナとの約束を忘れたことがあったか?」

私は再び夕日をみる。サテライトでみた夕日よりも大きく感じる。いくら見ても飽きない。

「やっと捕まえた。」
「…え、あっ。」

夕日を見るのに夢中になっていた私はクロウが私の手を握っていることに今気づいた。

「ヒナに言いたいことがあって、会おうとしても逃げるんだからな。今度は逃さねぇぜ。」
「逃げて無いよ。本当に何というかタイミングが合わなかっただけで…。」
「ま、ヒナがそう言うならそういうことにしといてやるけどよ。」

手を握られて心臓がバクバクしている。幼い時は何も感じなかったのに。

「…言いたいことってなに?」
「ヒナはあの日のこと覚えているか?」
「あの日…。」
「ヒナが居なくなった日だよ。」

私はその日のことを思い出すと一気に恥ずかしさが込み上げて、顔が熱くなった。

「あの日の言ったことは忘れて!あれはその…もうクロウに会えないかと思ったから…。」
「忘れられるわけねぇだろ…。というかその言い方だと俺に会えるうちは言ってくれねぇんだな。」
「そういうわけじゃないけど…!」
「冗談だっての。というかヒナだけ言わすのはやっぱずりぃよな。」
「それって…。」

クロウは私を彼の方に優しく引き寄せる。そしてそのまま私の背に腕を回してくれた。

「俺は正直ヒナがいなくなって生きた心地がしなかった。だから本当に戻ってきてくれて良かった。…もうあんな無茶はするんじゃねえぞ。」
「わかった。じゃあクロウもずっと私のそばにいてね。…約束だよ。」
「当たり前だ!好きだぜ!ヒナ!」

私とクロウはしばらくそのまま抱き合っていた。夕日はキラキラと輝いていた

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