第四話

私の目の前には見慣れた天井がある。間違いない。ここは私たちが生まれ育ったマーサハウスだ。あれ?私は黒い靄に巻き込まれて…。そうだ!クロウは!
私はベッドから降りてクロウを探しに行こうとしたら、部屋のドアが開いて、マーサがやってきた。

「目が覚めたかい?」
「マーサ!!私、クロウを探しに行かないと!」
「落ち着きな。」

マーサの話によるとクロウが意識を失っていた私をここに連れてきてくれたらしい。クロウは私が目覚めるまで待ってくれようとしたけれど、彼もダークシグナーとの戦いで負った傷があり、治療のためにマーサが帰らせたらしい。

「クロウは大丈夫なの?」
「命に別状はないから大丈夫さ。」
「ならいいんだけど…。」

ここで私はあの時の更に記憶を手繰り寄せる。クロウは冷蔵庫に入ってたから無事だったってことか。…何か大事なことを忘れているような気がする。

「あぁーーー!!!!」
「いきなり叫んでどうしたんだい?」
「あ、いや、今日の晩御飯の準備…」
「今日は私が準備するからアンタはゆっくりしてな!」

上手く誤魔化せたかな…。マーサが部屋を出ていった後、私は頭を抱えた。……私が叫んだ本当の理由はクロウに大好きだって言ってしまったことを思い出したからだった。



あれからクロウと中々会う機会がなくなってしまった。というのもクロウは遊星やジャックたちとWRGPに出ることになり、資金集めのために忙しく働いているとのこと。たまにマーサハウスに顔を出してくれていたが、その時は私が出かけたりして、すれ違っていた。
そんな時、マーサからクロウ達に差し入れを持っていくように頼まれた。

クロウ達の下宿先まで辿り着いたものの、クロウがいたらどうしよう。でも、いつまでもここにいるわけにもいかないし…。意を決して中にに入ろうとした時。 

「何しているんだ?ヒナ。」
「久しぶりだね。遊星。」

私に声をかけてきたのは遊星だった。遊星は工具箱らしき物を持っている。メカ関係の仕事でお金を稼いでるんだっけ。その仕事帰りなのかな。

「マーサからの差し入れを持ってきたの。」
「わざわざすまないな。」
「いいの、いいの、ジャックとクロウは?いないの?」
「クロウは仕事だな。ジャックは大方コーヒーでも飲みに行ってるんだろう。」
「そっか。みんな忙しいね。」

ジャック以外は。というのはギリギリ飲み込んだ。

「たまにはゆっくりしていったらどうだ?クロウもそろそろ帰ってくるだろうからな。」
「ご、ごめん。私今日はもう帰らないと…。」

クロウに会う心の準備がまだできてなかった私は、咄嗟に言い訳をしてしまった。

「そうか。だが、たまにはクロウにも会ってやってほしい。ヒナに中々会えないと嘆いていたからな。」
「えっ?」
「クロウと何かあったのか?」
「…何でもないよ。遊星。それじゃあね。」

そう言って私は遊星に背を向けた。私の事情はとても遊星には言えなかった。

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