ロンググッドバイ(ブルーノ)

空に浮かんだ居城アーククレイドル…。遊星達の話によるとアーククレイドルはネオ童実野シティに落下してくる。そうなったら私達住民は無事ではすまない。遊星達シグナーは落下を阻止するためにアーククレイドルへと向かっていった。気づいたらメカニックのブルーノもいなくなっていた。…多分ブルーノもみんなと一緒に行ってしまったんだろう。…みんなが命を賭けているのに私だけ避難したくはなかった。だからイェーガー長官やミゾグチさん達と一緒に治安維持局で遊星達の帰りを待つことにした。


遊星が無事にデュエルに勝利してくれてアーククレイドルは消滅した。みんなが帰ってきてくれたけど、そこに彼の姿はなかった。

「お帰りなさい!……ブルーノは?」

…みんながお互いに顔を見合わせる。遊星が沈痛な面持ちをしながら一歩進み出て私に壊れたサングラスを渡してくれた。

「なにこれ…」
「ブルーノは…もういない…。」
「え…。」

受け取ったサングラスが手から滑り落ちた。ブルーノの正体について遊星が話してくれたけど、目の前が真っ暗になって何も入ってこなかった。いや、脳が拒否しているといった正しいのかもしれない。

「すまない…ヒナ…。」
「……そんなの信じない。信じられるわけがない。」
「ヒナ!!」

遊星の声を無視して私は外へと駆け出した。必死に探せばどこかにいるはず。心当たりのある場所を順番に巡って行った。…だけどブルーノはどこにもいない。ブルーノを探し求め気づいたら私は彼が治安維持局に見つけてもらった海岸へと来てしまっていた。
…この場所は記憶の手がかりがあるかもしれないからと言って2人だけで来たこともあったっけ。結局ブルーノの記憶に繋がるものは何も見つからなかったのだけど。
疲れが出てきたのか私はその場にへたり込んでしまっていた。これ以上どこを探せばいいんだろう。
途方に暮れていたらどこからか私を呼ぶ愛しい声が聞こえた。驚いて周囲を見渡すと水平線の向こうにブルーノがいるのが見えた。

「待って!!ブルーノ!!」

ブルーノに追いつきたくて服が濡れるのも構わず私は海に向かって歩いて行く。近づいているはずなのにブルーノとの距離は詰めることができない。もう少しスピードを上げなきゃ…と焦ったときだった。私の腕時計のアラームが鳴り響いたのだ。アラームを止めて我に帰る。…今私は一体何を…?

「どこへ行くんだ!!ヒナ!!」

時計に気を取られていたらいつのまにか遊星が来てくれて私の腕を掴んでいて、水平線の向こうにいたブルーノは消えていた。

「ごめん…遊星。ブルーノの声が聞こえて…でも気のせいだったみたい…。」
「そうか。…ブルーノは最後までヒナのことを案じていた。どうかブルーノためにもヒナには生きてほしい。」
「大丈夫だよ。もうこんなことはしないから。」
「…その、オレが言えた義理ではないが…あまり無理はするなよ。」
「うん。」

遊星と2人で歩き私は腕時計を眺めながらこれをもらった時のことを思い出していた。

「ねぇ、ヒナ良かったらもらってくれないかな?」

ある日突然部屋に来たブルーノが私に差し出してきたのはリボンのついたおしゃれな小箱だった。

「どうしたのこれ?」
「まぁいいからいいから。」

彼に押し切られて小箱を開けてみるとそこに入っていたのは腕時計だったのだ。

「わぁ!可愛い!ありがとう!早速つけてみるね!」
「気に入ってもらえたならよかったよ。これタイマー機能やアラーム機能も付いてるんだよ。」
「へぇ、そうなんだ。でもなんでくれるの?」

ブルーノは少し照れくさそうに頭をかきながら話してくれた。

「ヒナはいつも頑張ってるからね。そのご褒美。それと…もし僕がいなくなったとしてもこれを見たら思い出してくれるかなって」
「…ブルーノいなくなっちゃうの?」
「いや、そんなつもりは毛頭ないけど…何があるかわからないからね。」
「…そう。」
「それから腕時計は離れていても同じ刻を過ごしたいという意味もあるんだって。だからキミにとってボクがそういう存在になれならいいなって願いも込めてね。」
「えっ…。」
「あ、え、えっと…ボク遊星に呼ばれてるんだった!行くね!」

聞き返す前にブルーノは部屋から出ていってしまったから真意は聞けなかったけれど。

ブルーノ…あなたはいなくなってなんかないんだね。ちゃんと私の心に生きづつけている。あなたが命かけて作った未来を私は精一杯生きるよ。
一つだけ文句があるとすれば…消える前にせめてありがとうぐらいは言わせてほしかったな。

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