Happy Valentine(クロウ)

バレンタイン当日。龍亞と龍可は戸惑っていた。それは目の前で項垂れているヒナが原因だった。よくわからないが、彼女はものすごく落ち込んでいるようで、どう声をかければいいのか分からなかったからだ。しかし、ここは兄である自分が行くべきか。と龍亞が声をかけた。

「ヒナ姉ちゃんどうしたの?元気ないじゃん。」
「あ、龍亞と龍可か…。」

この間までヒナはクロウに本命を上げるために色々頑張ってるの!とものすごく張り切っていたのに。一体何が彼女をここまで暗くさせるのか。

「私もうダメだー。クロウに渡すのやめるー!」
「どうして?!あんなに頑張っていたじゃない?」
「そうだよ!なんでまた急に?!」

二人が必死で励ます。二人はヒナとクロウの仲を応援していた…。というか進展のない二人にむしろヤキモキしていたぐらいだからだ。
励ましが届いたのかどうかは分からないが、ヒナはポツリポツリと話し始めた。

「バレンタインに向けて色々ちゃんと準備したんだよ。チョコだって作った。……でも、肝心の可愛いワンピースが買えなかったの…。」

そういえば、ヒナはバレンタインにお洒落をして渡しにいくって豪語していたことを思い出した。クロウに振られたかもしれないと思っていた二人は少しホッとした。

「なーんだ。そんなことか。だったら問題ないよ。」
「ヒナさん。大事なのは気持ちだって、アキさん達も言ってた。きっとクロウなら受け取ってくれるわ!」
「龍亞、龍可…。」
「そうだ!ヒナ姉ちゃんにあげる。俺たちがアキねーちゃんと一緒に作ったんだ。」
「これ食べて元気出して、ヒナさん!」|
「ありがとう!二人とも!」



二人に励まされて私はぽっぽタイムへと向かった。クロウは帰ってきているかな?そーっとガレージを覗くと遊星達が作業中だった。
遊星がこちらに気づき、声をかけてくれた。

「ヒナか。クロウならもう少ししたら帰ってくると思うが」
「まだ何も言ってないのに、なんで分かったの!」

遊星は私が持っている物を指差した。なるほど、お察しというわけですね。

「俺達はちょっと部品の調達に行ってくる。だからゆっくりするといい。」
「え?あ、いいの?」
「あぁ気にするな。」

そう言ってノリノリなブルーノと乗り気じゃないジャックを無理矢理連れて出掛けて行った。…遊星ありがとう。
しばらくするとガレージにクロウのブラックバードが入ってきた。

「クロウ。お帰り、遅かったね。」
「今日はバレンタインだったからな。どいつもこいつもチョコばっかりだったぜ。遊星たちはどこに行ったんだ?」
「部品の調達だってさ。」
「部品?この前も買いに行ってた気が。」
「か、買い忘れたんだよ。きっと。」

食い気味に答えたが、特に不審がられることもなく、クロウはあっさり納得してくれた。

「丁度よかった。ヒナに渡したいもんがあったんだ。」
「私に?」

クロウは私に紙袋を差し出してくれた。クロウの許可を取り中身を見てみると。

「これ…。」
「あー。最後の一着って書いてあったんで買っといたんだよ。」
「でも、良かったの?今クロウたちはWRGPに向けて資金調達してたんじゃ…。」
「いいんだよ。今は余裕があるし。…それ着てどっか行きたいとこあったんだろ?」
「え?」
「龍亞と龍可が話してたのがたまたま聞こえちまって…。」
「…クロウ、ちょっと着替えてきてもいい?」
「いいぜ。」

私は別室で着替えてみる。なんだか体の底から勇気が湧き上がってくるようなそんな不思議な感覚だった。

「クロウ、おまたせ。」
「サイズは大丈夫そうか?」
「うん、大丈夫。」
「やっぱり似合ってんな。それ着てどこ行こうとしてたんだ?」

私はクロウに恐る恐るラッピングしたチョコを差し出した。

「え?俺に?」
「今日バレンタインでしょ。どうしてもこのワンピースを着てクロウに渡しかったの…。」
「…ヒナ、すげぇ嬉しい。でも、ヒナはそんなことしなくても…いや、俺のためにありがとな。」
「受け取ってくれる?」
「もちろんだ!」

クロウが私を抱きしめた瞬間、遊星達が帰ってきたので、慌てて離れた。…その後私たちはいろんな人にからかわれることになったのだった。


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