SSシリーズ(wt)
2024/06/04 00:04

※影浦のお誕生日小説だと言い張る

「おい、ちとツラ貸せや。」

放課後、隣のクラスの影浦くんがわざわざ私の席までやってきて放った一言がこれだった。周りにいた人たちが止めるもなく腕を掴まれてそのまま連れて行かれてしまう。
私は影浦くんの気に障ることをしてしまったのだろうか。正直に言うと心当たりがなくはないのだが…。考えながら歩いてると影浦くんが空き教室に入ってようやく足を止めた。

「ここまで来れば大丈夫だろ。」
「影浦くん…どうしたの?」
「それはこっちのセリフだろうが。今日一日チクチク刺してきやがって。」

あちゃー。やっぱりバレてた。影浦くんのサイドエフェクトは影浦くんに向けられた感情に対して反応するものだから気づかれないわけがなかったのだ。

「で、何の用だ?誰もいない今なら言えんだろ?」
「ごめん、ちょっと待っててもらえるかな?」

影浦くんの返事を聞く前に私は教室へと戻っていく。私の感情を影浦くんがどこまで感じているのかはわからないけれど、どうやら彼は私を気遣ってここまで連れてきてくれたようだ。

教室に戻ったらみんなに質問攻めにされて(影浦くんの言い方が悪かったのかみんな悪い方向に勘違いしていた。)クラスメイトの誤解を解いていたら遅くなってしまって慌てて空き教室に戻った。いなかったらどうしよう…と思っていたが影浦くんはちゃんと待ってくれていた。

「遅ぇよ。」
「ごめん。これを渡したくて」
「お、おう。」

私はラッピングした小さな包みを影浦くんへと差し出す。戸惑いながらも影浦くんは受け取ってくれた。

「今日お誕生日でしょ?ずっと渡したかったんだけどタイミングが無くて…。」
「…そういうことかよ」

影浦くんはため息をついた後、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。髪の毛がぐちゃぐちゃになってしまったけれどドキドキが勝っていたのはどうでも良くなっていた。

「…今度からはそういうのはすぐに渡せ。お前の感情が刺さってくんのは気が気じゃねぇからな。」

そういう影浦くんの顔は心なしか赤く染まっているように見えた。私が影浦くんに向けている感情と影浦くんが私に向けている感情が同じだったらいいのになとは思わずにいられない私だった。



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