※FFI中ですが佐久間は敬語です
※変態佐久間注意
「鬼道さん!」
俺は、一体こいつのどこが好きなのだろう。
パタパタと音を立てて俺に駆け寄ってきた佐久間はまるで犬みたいだ。
人間には生えていないはずの尻尾をぶんぶん振っているような姿が、容易に想像できてしまうあたり、酷く馬鹿らしいと思う。
「……佐久間」
「鬼道さん、こんなところにいたんですか。探しましたよ!」
嘘をつけ、嘘を。
面倒で無視をしていたが、どこに行くにも背後に佐久間の気配がまとわりついていた。ついさっきもずっとそこの壁から覗いていただろうが。
軽く睨み付けてみるけれど、佐久間は全く気にしないのか、にこにこと笑顔を貼り付けたまま。それとも俺が睨んだことにさえ気づいていないのか。
「はぁ…」
ひとつ溜め息を漏らせば、大袈裟に反応した佐久間に距離をつめられた。相変わらず顔が近い。
「どどどど、どうしたんですか鬼道さん!!」
お前のせいだ、なんて言えずに黙っていると、佐久間は心配そうな表情を浮かべつつ、額に触れたりしきりに顔色を伺ったりしている。きっと俺が風邪を引いた、もしくは怪我をしたのかもしれないとでも勘違いしているのだろう。
身体中をぺたぺたと触れられたまま、気づけば若干はあはあと荒い息が聞こえ始める。しかし、佐久間と付き合う上でそんなことは日常茶飯事なので、気にしては負けだと思うことにした。
「おい、佐久間やめろ」
「はぁはぁ…きど、うさ…!」
首や肩、腕や足までも念入りに身体中を触られる内に、そもそも仮に風邪や怪我をしていたとしても、それを確かめるのに触る必要はないだろう怪しげな場所まで触れられそうになる。いい加減制止させようとするが、何かスイッチが入ってしまったらしい佐久間の手の動きは止まらなかった。
「お、おい、ッ…佐久間…う、ぁ!」
ジャージの隙間から滑り込ませるように差し入れた佐久間の手が腹部をするりと撫でる。そのまま指先は上へと辿り、敏感なそこに触れた瞬間、背筋に生じた電流のような刺激に俺は瞳をぎゅっと閉じた。
「――おい、ヤるなら部屋でヤりやがれ」
ふいに、ゴスッと何かを叩いたような鈍い音と、同時によく知る声が聞こえ、そちらへと視線を向ければ。
不快感丸出しに表情を歪め、握り拳を構えた不動の姿。
唸りながら頭を押さえている佐久間の様子から、不動に殴られたらしい。
「ふど、う……すまない」
「チッ」
我に返ってみれば、此処が食堂だったことをすっかり失念していた。つまり、俺はイナズマジャパンのメンバーが集まるこの場所で、そしてその視線に晒される中、セクハラ紛いの行為をされていたことになる。
羞恥に顔へと熱が集まると同時に、自分のいる場所さえも認識出来ずに、佐久間に流されてしまう自分が情けなくてどうしようもなかった。
「じ、邪魔するなふど――ごふっ!」
不動を忌々しげに睨む佐久間の頭に拳を一発入れて、俺はまた一つ溜め息を溢した。
鬼道有人の憂鬱
「ひ、ひどいです鬼道さん…っ」
「……鬼道クンも大変だねぇ。ところ構わず盛られて」
「はぁ……もう、慣れた」