風丸が告白された。
それも男に。
女の子だったら、特に気にも留めなかったのだろう。
昔から風丸はモテたし、幾度となく告白されるのを、俺は目にしていたから。
「何て答えたんだ?」
狭いシングルベッドへと風丸を追い詰めて俺は問い質した。
二人分の体重がかかったスプリングが音を立てる。
必死そうな俺の様子にはじめは目を丸くしていた風丸が、暫くして何かに納得したのか、ふっと表情を和らげた。
「…もちろん、断ったよ」
「……そっ、か」
ほっとして、思わず全身の力が抜けてしまった俺は風丸の肩へと頭を預ける。
さらりとシーツに流れる青い髪からは嗅ぎ慣れたシャンプーの香り。
「円堂…?」
わかってる。
風丸が承諾するはずがない。
風丸は俺の幼なじみで、恋人だから。
今まで数十回とされたそれを風丸は全て断り続けている。きっと今回もそうなのだろうと思っていた。
恋人の俺を差し置いて、風丸がそんなことをするなんてあるわけがないと。
けれど、今回風丸に告白したのは男で。
それを聞いた俺はいてもたってもいられなくて、どうしようもなく不安になった。
俺以外に、風丸をそういう目で見ている奴がいるのかと思うと不快で、吐き気すらしてくる。
風丸は誰にも渡さない。誰にも、渡したくない。
こんなにも暗くて醜い気持ちになったのは初めてのことだ。
「風丸…っ」
俺は投げ出された風丸の掌に、無意識に自分のそれを絡めていた。
そのまま首元に押し付けた額を甘えたな子供のように擦り寄せる。
「……不安になるなよ、円堂」
そう言いながら、ふわりと俺の頭を撫でる掌は、俺なんかよりも小さく綺麗で、暖かかった。
やっぱり風丸には敵わない。
風丸には俺の考えてることなんて全部お見通しなんだ。
「俺には、円堂がいるだろ?」
風丸はいつも俺の欲しい言葉をくれる。
俺は風丸に甘えてばっかりだ。
大好きな唇から紡がれたそれに、不意にも泣き出しそうになったのは、俺と風丸だけが知っていれば、それだけで良かったんだ。
できることなら、閉じ込めてしまいたい
「っ…風丸…好きだ」
「……あぁ、知ってる」