※真帝佐久間→雷門鬼道
※円堂さんが嫌いな佐久間
※真帝国戦前





俺は、愛する人を奪ったあいつがどうしようもなく憎かった。
そいつの姿をこの目にした瞬間、怒りと妬みと、様々な感情がない交ぜになって俺に襲いかかる。
太陽のように全てを照らす光が不快だ。けれど何故か目を逸らすことができない。
俺の大切な鬼道さんを包み込むその存在が目障りで、できることなら、殺してしまいたい程に。

「う、ぐぁ…ッ!」

俺は華奢な身体に向かって、思い切りボールを蹴りあげた。
洗練されたキック力で放たれたボールの衝撃をまともに食らった鬼道さんは、うめき声を上げ、地面へと膝をつく。

「鬼道!」

その様子に、心配そうに駆け寄り、鬼道さんの名前を呼ぶそいつの声がフィールドに響き渡る。
ああ、憎い、憎い、憎い。
お前なんかが気安く、鬼道さんの名を呼ぶな。
触れるな、近付くな。
思う存分痛めつけ、鬼道さんに近付けないようにして、そいつの好きなサッカーをもう二度と出来なくなるようにしてやりたい。

「ッ…俺は、大丈夫だ……円堂」
「でも…っ」
「これは、俺達の問題だ…!」

けれど、もし俺がそいつを傷付けてしまったら、きっと鬼道さんはそいつを心配するでしょう?
貴方は優しいから、そいつの為に傷付こうとしてしまう。苦しんでしまう。
俺以外の誰かの為に、なんて。
そんなものを見るくらいなら、いっそ貴方自身を傷付けることの方がマシだとさえ思う。

「さ、くま……」

だから、俺は自分の手で直接貴方を傷付けた。
そうすれば、苦しむのは、痛みを感じるのは、貴方と俺、ふたりだけ。
そして身体と心に、簡単には癒えない傷痕を刻みつけるんだ。



貴方の痛みは僕の痛み



ねぇ、鬼道さん?





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