「手、冷たいな風丸」

円堂の部屋で、いつものようにベッドの上で寛ぎ、寝転がりながら暇をもて余していたその時だ。
隣に座っていた円堂の腕がこちらに伸び、唐突に右手を握られて、俺は思わずそれを振り払いそうになってしまった。

「な、なんだよ…いきなり」

昔からの付き合いでその上恋人同士なのだから、手を繋ぐことくらい今更なのだけれど。
何となく気恥ずかしくて、視線だけは反らしたまま円堂に顔を向ける。

「指の先真っ赤にして寒そうだったからあっためてやろうと思ってさ!」

そう言って指をさらに絡められ、俺の心臓はどくんとはねる。
俗に言う、恋人繋ぎというものだ。
合わさった指を交差して、互いの掌から隙間を奪う。
繋いだそれから円堂の体温が直接伝わってきて、顔に熱が集まるのを感じた。

「……円堂は、あったかいな」
「…そ、そうか?」
「あぁ、すごくあったかい」
「う、わ…!」

もっと、その温もりを近くに感じたい。
一時の羞恥よりもその感情が勝って円堂をこちらに引き寄せれば、バランスを崩した円堂はギシと音を立ててベッドに倒れ込む。
シングルベッドに成長盛りな男子中学生二人が横になるにはさすがに狭くて、円堂と密着したその状態は身動きなどとれるような状況ではなかったが、決して嫌ではなかった。
俺は繋いだままだったそれを、自らきゅっと握り返してみる。
より触れ合った円堂の掌は先程よりも心なしか湿っていて、緊張しているのは自分だけではないのだと安心する。
円堂の掌は、不思議と俺に安心感を与えてくれた。
少しの恥じらいと同時に、俺の心を満たすのは何とも表現し難い心地よさだ。

「うーん、なんでだろ…ゴールキーパーやってるからかな」
「ぶっ」

思案したような様子で真面目臭く応える円堂がなんだか可笑しくてつい吹き出してしまう。
くすくすと笑っていると、円堂は不機嫌そうに頬を膨らしてじとりと俺に視線を寄越した。
その表情は、昔と何も変わらずに何処か懐かしくて、自然と頬が緩む。

「ん……だんだんあったまってきたな」
「うん」

冷えきって赤みを帯びていた指先は、円堂の熱が伝わり、すっかり元の色に戻りかけている。
互いの温もりを確かめて、何をするでもなく、俺達はひたすら指を絡め合った。
円堂の母が夕飯の時刻を知らせに来るまでの間、絡めた指先はそのままに、繋いだてのひらを片時も離すことはなかった。



指先から伝わる








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