やっと。
漸く貴方と解り合えた。
俺の全てを与えてくれたのは貴方で、それを壊したのも貴方。
暗くどん底に落ちた俺を拾い上げてくれた貴方への、感謝と畏怖の念を取り払って、ただ憎むことだけに徹し、貴方から離れた。
それでも貴方から受け継いだそれは手放さずに。
貴方が憎くて、恨んで、恨んで、許さないと心に決めた。
幾度も貴方は大きな壁となって立ちはだかり、俺を苦しめた。
けれどその先に見えたのは貴方の確かな愛情で。
それは醜く、酷く歪んだ愛だった。
強く望み続けたそこに辿り着くまで、長い年月をかけて遠回りしてしまった可愛そうな貴方。
貴方が犯した罪をやはり許せそうにはないけれど。
それでもいいとさえ思えた。
それに向けた貴方の愛は本物だった。
ひたすらに捧ぐ愛情が眩しかった。
やっと解り合えた。
そう思ったのに。
神様はなんて無慈悲だろう。
貴方はもうこの世にいない。
最後に目にした安らかな笑みを再び見ることは叶わないのだ。
貴方は消えてしまった、遠い何処かに。
時が過ぎれば、貴方の存在は時間と共に人々の記憶から風化していくのだろう。
罪が消えることはないけれど、時間がそれを和らげてくれる。
それでも、俺だけは。
貴方と過ごした日々を。
貴方の罪を。
貴方の意志を。
貴方の全てを。
けっして忘れない、と心に誓って前へ一歩踏み出した。
貴方から受け継いだものを握りしめて、進む。
それが貴方への恩返しになるのなら。
貴方が愛したものを片手に。
ただただ歩いていくだけだ。
目を閉じれば、貴方の顔が鮮明に思い出される。
貴方の様々な表情が脳裏を駆け巡った。
そして、最後には、忘れられない貴方の言葉。
―――ありがとう。
貴方はいま、幸せですか?
終止符のその先に
title:愛憎