ちゅ、ちゅ、とリップ音が響く。
唇、頬、鼻、顔中にキスを落としてくる天馬はいとおしげに目を細めた。

「キャプテン」

優しい声音は、どこかほっとする。
自分よりも小さな身体に抱きつかれて、柄にもなく、もう少しこの時間が続けばいいのに、と思ってしまう。
ふわふわと羽に包まれているような心地いい感覚は何とも言い難い。

「キャプテン、キスマークつけてもいいですか…?」
「……好きにしろ」
「へへ」

普段なら決して許可など出さないが、アルコールで酔わされたようにぼんやりする意識ではそんなことどうでもよくて、穏やかな気分で拓人も微笑み返した。

「……ねぇ、キャプテン」
「なんだ、天馬」
「俺、幸せなんです」
「………そうか」

俺も、と言えないのは性格上仕方ない。
けれど、同じ気持ちを伝えられないのが嫌で、首筋へと唇を寄せた天馬の後頭部に腕を回して抱きしめた。
苦しいです、ともごもご口を動かすのがくすぐったい。
暫くそうしていると、大人しくなった天馬が再び肌に吸いついてきて、ふいに首元を甘い痺れが襲った。

「……へへ、俺のモノっていうしるしです」

花びらのように散った朱は、透き通るような白に良く映える。
痕を満足気に眺めながら笑う天馬は本当に幸せそうだ。
少し前までは、羞恥でキスすることすらろくにできない様子であったのに、すっかりそういう行為にも慣れてしまったらしい。
そんなところまで伸びざかりというやつだろうかと苦笑するが、やられっぱなしも癪に障ったので、拓人はへらへらとだらしない笑みを浮かべたままの後輩を強く引き寄せた。

「んぅっ…キ、キャプテン!?」

直後、触れ合った唇は柔らかくて熱かった。
不意打ちに奪った唇の形を確かめるように思う存分吸ってやる。
もう幾度となくしてきたそれは、相手にされるのと自分でするのでは何かが違うようだ。
そっと唇を離せば、目を丸くして信じられないとでもいうように瞬きを繰り返す天馬の顔は真っ赤に染まっていた。

「お前ばかりにやらせてたまるか」

まだ微かに残る初々しさが微笑ましくて、ふと悪戯心が沸き上がる。
触れた唇を見せつけるようにして指で撫で、拓人は意地の悪い笑みを向けると、未だ動揺している可愛い後輩に、二度目の口づけを落とした。






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