「風丸は髪切らないのか?」
「は?」

円堂は髪を触りながらそう言った。
指ですく度にさらりと首元に触れるのがくすぐったい。
俺は好き勝手に触れる手を制止して、じとりと円堂を見上げた。

「切るなって言ったのはお前だろ……」

あれはまだ小学校の頃だっただろうか。
肩まで伸びた髪が鬱陶しくて切ろうとしたら、円堂が泣きべそをかきながら切らないでくれと懇願してきたのは。
そんな過去はさっぱり忘れたと言わんばかりにそうだっけ?と首を傾げる円堂に、そういえばこういう奴だったと呆れるしかない。

「んー…俺、風丸は短いのも似合うと思うんだよな」
「あ、そ」

確かに、たまには短いのもいいかもしれないとは思うが、なによりめんどくさい。
それに円堂のことだから、やっぱり長い方がいいとか言い出すに決まっている。

「なーかぜまるー…切らねぇの…?」
「……っ!」

甘えるような上目遣いに、思わず胸がどくどくと跳ね上がった。
ああもう本当に円堂はずるい。
なんて顔して見てくるんだこいつは!
じゃれるようにして、肩に擦り寄ってきた円堂はまるで子犬みたいだ。

「はぁ……わかったよ……」
「へへっ風丸ならそう言ってくれるって信じてたぜ!」

結局俺は折れてしまった。
俺は円堂に甘すぎる。
そんなこと十分に承知している。
けれど、こんな風に言われてしまえば、もう断れるわけがなかったんだ。





その後。
冬「できたよ、風丸くん」
風「ありがとう、久遠」
秋「わあっ風丸くん短いのも似合うね!」
春「風丸先輩かっこいいです〜!」
円「………」
風「ほら、お前の言う通り切ったぞ円堂」
円「………」
風「円堂?」
円「……なんか、もやもやする」
風「は……?」
円「やっぱり髪伸ばして風丸!」
風「………もうやだこいつ」






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