※円堂視点(DE後)
俺は、風丸の全部を知っていると思っていた。
誰よりも大切で、誰よりも側にいたから。
離れた時も、ずっと心は通じ合えていると信じていた。
いつか戻ってきてくれると信じて、そしてまた笑い合えることができたその時に、全てを受け止めると約束したんだ。
なのに、あの頃の風丸は戻ってこない。
隣にいるのは紛れもない風丸で、けれどどこかぽっかりと穴の空いたような違和感。何かがもの足りなくて、でもそれが何なのかわからなかった。
「好きだ、風丸」
俺は風丸が好きだ。
幼なじみで親友、俺はいつからその関係に我慢できなくなったのだろう。友情が愛情だと気付いたのはいつからだったのだろう。
けれど、そんな自分への問いかけはどうでもいいことのように思えた。
「風丸、かぜまる」
縋るようにして何度も何度も名前を呼ぶと、眩しそうに目を細めて風丸は俺を見る。
優しい瞳も、何か言いたげに震える睫毛も、表情や仕草だって、何一つ変わらないはずなのに。
「………俺も、好きだよ」
いつから風丸は、俺の目を見なくなったのだろうか。