例えば、君のどこが好きかと聞かれたら。
普段はひとつに束ねた癖っ毛のその髪が、寝起きだけは更に自由奔放に跳ねているところも。
頭を撫でた時に、猫のように目を細める表情も。
たまに可愛らしい頬を真っ赤に染めて、きつくこちらを睨み返す強い眼差しも。
君を形作る全てが愛おしい。
「ヒロト…?」
俺の視線に気づいた彼は気だるそうに目を擦り、俺を見た。
ふああと欠伸をした彼の黒目がちなそれは生理的な涙でうっすら滲んでいる。
「ううん、なんでもないよ」
「嘘つき。どうせ変なことでも考えてたんだろ」
「変なことって……例えば?」
「っ…しらない!」
ああ、また頬をぷくりと膨らませて。
彼の一挙一動全てが俺を魅了するのに、きっと彼は気づいていないのだろう。
今すぐにでも腕の中に閉じ込めて、見た目よりも意外と華奢なその身体を抱きしめたい。
もしも、君のことを考えていたんだと教えたら、彼はどんな表情を見せてくれるのだろうか。
「……にやにやするな馬鹿ヒロトっ」
拗ねたように唇を尖らせる君も、食べてしまいたいくらい可愛かったから。
暫くはその表情を見ていたくて、俺は微笑みを顔に貼り付けたまま黙って彼を眺め続けた。