それはただ単純に。
どうしようもなく気になって、自然と口から零れた質問だった。

「なぁ、風丸って好きな人いる?」

風丸は、好きな人がいるのだろうか。
俺にはよくわからないけど、好きな奴を思って胸を高鳴らせたり、苦しくなったりするのだろうか。
もし好きな人がいるのだとしたら、それは誰なのだろうか。
俺の知ってる奴なのだろうか。
理由は、気になったから。
それだけに過ぎない、そんな疑問。

「……急にどうしたんだよ」
「いや、なんとなく」
「なんだよそれ」

今まで恋愛の話なんてしたことがなかった俺が言い出したもんだから、風丸は怪訝な表情で俺の顔を見る。
そうしてひとつ溜め息を吐いた風丸は、苦虫でも噛み潰したかのように答えた。

「………いるよ」
「ふうん、誰?」
「い、言うわけないだろ」

風丸は決まり悪そうに俺から目を逸らす。
そんなに言い難いものなのか。
やっぱり俺にはよくわからない。

「そういう円堂は?」
「俺?俺は……」

返ってきたのは、同じような問いかけだ。
俺の、好きな人。
そんなの答えなんてひとつしかない。
だから俺は、素直にその名前を口にした。

「風丸」
「……は?」
「俺は風丸がすきだ」

これは俗に言う告白、というやつなのだろうか。
風丸は前髪で隠れていない方の目をめいっぱい見開いて、信じられないとでも言いたげだった。
数秒間、何も言わずに、そして急に俯いてしまう。

「そんなの、おかしい…だろ」

何が、おかしいというのだろう。
俺は風丸が好きで、それを何の偽りもなく正直に伝えただけで、俺は何も、間違ったことはしてないのに。
風丸以上に好きな奴なんていないし、思い浮かぶ相手など誰もいない。
そう言っても、風丸は何も答えてはくれなかった。

「………」
「……風丸?」

顔を下に向けたままの風丸が、どんな表情をしているのか、無性に気になった。
付き合いの長い俺達にとって、知らないことはきっと片手にも満たない。
なのに、俺は風丸が誰を好きなのか知らない。
今、風丸が何を考えているのかもわからなくて、もっと、もっと、風丸以上に風丸を知りたいと、強く思う。
俺は、風丸のことになると気になってばかりいるらしい。

「顔、見るな」
「なんで?」

見るなと言われたら余計見たくなる。
下から覗くように近付く俺を払い除けて、更に頭を垂れた風丸は、しまいには掌で顔を隠した。
けれど、嫌がる風丸よりも知りたいという興味が勝ってしまった俺は、お構いなしに風丸のそれを振り払う。

「風丸、顔見せて」
「っ…え、んど」
「あ……」

そしてやっとの思いで、垣間見た風丸は、何故だか泣きそうな顔をしていた。






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