2012/02/14
後ろ姿になると、細い項がよりいっそう頼りなく見える。
汗に濡れたそれが色っぽくて俺は唇を寄せた。
「ねぇ、……鬼道さん」
「っ、あ……」
「俺の子、孕んでくださいよ」
散々好き勝手された身体をびくりと震わせ、微かな怯えさえも見せた鬼道さんが、小さく笑ったのが分かった。
「……無理に決まってるだろう」
「なんで赤ちゃんできないんですか」
「できないものはできない」
「なんで」
「俺は、女じゃないからな」
知ってますよ。
そんなこと、初めから分かってる。
ただそうなってくれたらいいなって思っただけだ。
今よりももっと、自分の物になるんじゃないかって。
「孕んでください鬼道さん」
そしたら、俺の物だって証明してみせるのに。
「…頭でも沸いたのか」
「はい」
「馬鹿げたことを言う暇があるなら、さっさと動け」
「はい」
「……?訳がわからないな」
自分から言い出したくせにあっさりと引き下がった俺に、鬼道さんはため息をついた。
「鬼道さん」
まるで、語りかけるように名を呼ぶ。
分からなくったっていいんです。
こんな馬鹿みたいなこと本気で思うくらい、鬼道さんのことが好きなだけだから。
「あっ、あぁ」
後ろから腰を抱えて、強く揺さ振ると艶かしい声が漏れる。
突き上げる度に溜まった精液がぐちゅんと音を立てて、もしも鬼道さんが女だったなら、と俺はそんな最低な事を考えた。
「は、ぁ…さ、くま…!」
誰にも、渡したくない。
ぜんぶ、ぜんぶ、俺のものになってしまえばいい。
子供じみた独占欲だと、どうせこの人は鼻で笑うだろうから、決して口にはしないけれど。
種付けて、孕ませて。
全部欲しい。
「貴方は、俺のものですよ…鬼道さん」
あぁ、なんて歪んだ愛情。