「鬼道」

呼び止められて振り返った。そこには不動の姿。

「何だ」

「ちょっと付き合えよ」

腕を掴まれる。俺は思いっきり振り払った。

「何に付き合うんだ」

「ち つれねぇ奴」

「……?」

不動が俺のゴーグルに触れる。

「何だ」

「鬼道クンはなーんにも気づかねぇんだな ふ 純情だねぇ」

「?」

不動は不適な笑みを浮かべゆっくり俺のゴーグルを外す。

「な 何だ……」

「……赤い目」

不動が呟く。俺はこいつが何をしたいのか全くわからない。

こいつと少し距離が縮んだのはつい最近のことだ。

だからなのか前よりこいつを嫌と思わなくなった。

不思議だ。

「鬼道」

「だから何だ」

「ちょっと目瞑ってくんね?」

「は?」

(何がしたいんだ……)

俺は言われた通りに目を瞑る。

するとすぐに唇に柔らかいものがあたった。俺はびっくりしてすぐに目を開ける。

「ごちそうさまでしたっと……」

「な な な」

俺は真っ赤になってしまった。

「じゃあな 鬼道クン?」

「な 何するんだ!!不動ぉお」






部屋に戻っても顔は熱いまま。なぜか体が熱く 胸がドキドキする。

(な なんだ……俺はどうしたんだ…)

嫌じゃない……それが不思議

(まさか…俺は)

そう思っていたらドアが開かれた。

「鬼道ー 練習はじまるぞー」

円堂が迎えに来たらしい。

「ん?鬼道?」

円堂は様子に気づいたらしく心配そうに俺を覗き込む。

「なにかあったのか?」

「い いや……何も」

すると円堂は「ふーん」と言った。

「練習はじまるから早く来いよ」

「ああ わかった……」

円堂が部屋から出て行った。

俺は頭を抱える。

(円堂にまでわかるぐらい……俺は今 乱れているのか…)

ため息をつきさっき触れられた唇をそっとなぞる。

(……あ 熱い………)

全身に自分の心臓の音が響き渡る。

「は 早く……行かなければ……」

円堂が迎えにきたということはもう全員揃っているに違いない。

俺はドアを開ける前に深呼吸をして部屋をでる。

はずだった……

その前にドアが開かれた。

「お兄ちゃん!!みんなを待たせてるんだから早くしてよっ」

そこには春奈が立っており大きな声で怒鳴られてしまった。

「あ あぁ……今 行く」

俺は部屋の扉をしめ春奈に「すまなかった」と言って先に進む。

「お兄ちゃん…なにかあったの?」

春奈は心配そうに俺を見つめ首を傾げた。最愛の妹までも俺は心配をかけてしまったのか……。そんな風にぼーっとしていると春奈が俺の肩に手をおいた。

「私に話せることなら言ってよ」

「春奈……」

話したいのは山々だが……不動にキスされたのが嫌じゃない いや…逆にドキドキするんだがこれはいったいなんだ?とは少なくとも聞けない。

「実は……最近まで嫌いだった奴が変なことをしてきてな」

「……それって 不動さんのこと?」

春奈は少しも考えずに即答する。

「な なんでわかったんだ…」

「私はマネージャーだもん それにお兄ちゃんのことならなんでも知ってるつもり!」

「春奈…」

「それで?へんなことって?」

「え……」

不動とわかった以上 キス とは言えなくなった……

「そ それは…」

「なにかされたの?」

「ご ご ゴーグルを外されたんだ……」

嘘は言っていない。本当のことだ。

「で……ゴーグル外されて 何に悩んでるの?」

「その……ど ドキドキするだ」

春奈はその言葉を聞いたとたん頬を染めた。

「お兄ちゃん……それ」

「おーい まだかよー いい加減にしないと監督に怒られるぜ」

またも円堂だ。わざわざ慌てて来たところをみると監督がそろそろヤバいのだろう。

「あ ああ 今 行く」

俺は春奈に向き直り「ありがとう 春奈 少し軽くなった」と言った。

春奈は「うん 頑張ってね」と手を振る。
俺はその場を急ぎ足で立ち去った。






『ドキドキするんだ』

最愛の兄がさっきいった言葉を思い出す。

(まさかお兄ちゃんが……ね)

そう思いながらグラウンドへ向かう。

「遅かったじゃねーか 鬼道クン?」

不動さんがお兄ちゃんに話かけた。もちろんお兄ちゃんは顔が真っ赤になる。

「う う うるさいっ 別にお前には関係……ない」

「いや 俺のせいかもと思ってな」

不動さんはお兄ちゃんのゴーグルにまた触りラインにそってなぞりはじめた。

「ふ……不動」

「顔 真っ赤」

くすりと笑うと不動さんはお兄ちゃんのゴーグルに口づけし立ち去った。

「ぁ……」

私は思わず目を伏せる。見てるこっちが恥ずかしい。

(なんで気づかないの……お兄ちゃん)

お兄ちゃんをみて切なくなる。

でもふいっとお兄ちゃんをみると頬を染めてまたぼーっとしていた。

(お兄ちゃん……頑張って)

私は心の中でお兄ちゃんを応援する。




















気づけない
(あなたが気づく日はそう遠くないはず)










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兄弟っていいなぁ
管理人はひとりっこなので
兄弟に憧れます

鬼道たんきづけー
ってのがかきたかっただけ




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