本当はわかってたんだと思う。俺はただ、自分に嘘をついてごまかしていただけだと。






「先輩」

狩屋が俺ににこっと笑って「おはようございます」と言った。

「あぁ、おはよう」

今日は横に神童がいる。

(あぁ…そうか、)

神童がいるから狩屋はにこにこと笑っているのか。

狩屋は俺や同級生の天馬達以外にはこんな風に猫をかぶる。特に俺の親友、雷門のキャプテンの神童にはよくこんな風ににこにこする。

なんだかモヤモヤする。

神童に猫をかぶる狩屋が嫌だった。

狩屋はおそらく俺が好きなんだと思う。

神童は単純だから狩屋を気に入っている。それは神童の顔を見ればわかる。俺はそんな神童を見ると辛い。

神童は俺の親友で、一番よく知っている。狩屋は転校して来て、しかも後輩だ。

嫌なことしか想像できない。

「じゃあ、俺行きますね」

狩屋そう言って行ってしまった。

「狩屋って良い奴だよな」

神童がポツリと呟く。

俺はそんな神童から目をそらした。






(まーたキャプテンのこと見て、俺を睨んでた)

完璧に嫌われたと思う。

本当にめんどくさい先輩だ。

(叶うはず、ないのに)

俺はあの人を追いかけてる。どんどん先に行ってしまう先輩を、

「めんどくせー」

空を見上げた。

鳥が沢山飛んでいる。

立ち止まっていた横断歩道が青になり、足を前に踏み出す。

「あ」

声を出していた。

耳障りなブレーキ音が俺を包む。

『狩屋ぁ!!』

先輩の声が聞こえた気がした。






俺は自分を殴りたいと初めて思った。どうして人は脆く生まれてくるのだろう。どんなに堅いものにぶつかっても、雷が落ちても死なない身体になれないのか。神様が憎い。

あの日、狩屋は死んだ。

交差点で曲がってきた大型トラックにはねられて即死だったとなんとなくきいた気がする。

天馬達は崩れ落ちるように大泣きしていた。いつもならそんな天馬達に痛い視線を送る剣城でさえ悲しい顔をしていたっけ。先輩も涙を流していたし、神童もボロボロ泣くしであの日はとにかく大変だった。

なんせ俺と神童の目の前で狩屋ははねられたのだ。俺達はどうするこたも出来なかった。ただ、唖然としていた。何が起こったのか理解出来なかったのかもしれない。

狩屋が死んでから一ヶ月たった。

「なぁ、狩屋…」

俺、気づいたんだよ。お前の大切さに。お前がいないとサッカー、なんか楽しくないんだよ。

狩屋……

「好きだったぜ、狩屋」

俺は空に呟く。

青空の向こうにいるお前に届けと願うように。






















もう遅い、遅すぎた
(後悔してもしきれない程に……)










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蘭→←マサ で死ネタ です

死ネタは初めてでした


リクエストありがとうございました



20120524


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