随分と遅くなってしまったな、と夕日に染まる空を眺める。いつもは神童と一緒に帰っているが今日は俺が音無先生に呼ばれてしまったので先に帰ってもらった。 (二人きりになれるのは帰りぐらいなのに、神童には悪いことをしたな。) 「ごめんな」と断った時の残念そうな神童の顔が頭の中で過ぎる。 (神童に会いに行くか。) 自分自身も彼に会いたい。それに神童の嬉しそうな顔が見たくて俺は彼の家の方へ歩き出す。 「お前、あの屋敷の坊ちゃんだろ?」 「金、持ってんだろ?あぁ?」 薄暗い路地の方で声がする。おそらくこの辺を彷徨いている不良だろう。絡まれている人が可哀想に思う。俺も何度か女に間違えられて絡まれたが、女だと思っていた不良共は油断していたのか俺がぶん殴ってやるとヒィッと泣いて逃げて行った。本当に口ほどにもない奴等だった。 「そ、そんな…持ってませ、ん」 ふと聞こえてきた声にびくっと反応する。 (ま、まさか……) そぉっと路地を覗いてみると思った通り絡まれているのは神童だった。俺は一度、壁に隠れる。 (ど、どうして神童が……?!) もう帰っていてもおかしくないはずだ。どうしてこんなところに……、 (と、とにかく助けてやらないと) 俺は勇気を出してバッと「やめろ」と低い声で不良の前に立つ。「あぁん?」と奴等は言う。三人組だった。神童はまさか俺が来るとは思っていなかったのかびっくりした顔で目を見開いている。 「何だ、お前」 「お友達を助けに来たんだろ」 一人が神童と俺の制服が同じなのに気づき「へっ」と笑うと、他の二人もニヤニヤと笑みを浮かべた。 「いいから神童を離せ」 俺は一人の腕を掴む。 「良い度胸だな?」 俺は不良を睨み付け顔面を殴る。他の二人は「てめぇ!!」と言って蹴ったり、殴ろうとしたが俺はそれを優雅に避けてそれぞれに蹴りを入れてやると、あの時と同じようにヒィッと言って倒れた。 「まだ、やるか?」 低い声で呟くと三人は「お、覚えてろよ!」とベタな吐き台詞を言い残して逃げて言った。俺はふぅと息を吐くと神童に「大丈夫か?」と聞く。 「あ、あぁ…ありがとう」 「怪我は?」 「ない、大丈夫だ」 確かに外傷は無さそうだ。「良かった」と言うと神童は安心したのか足から崩れ落ちる。俺はそんな神童を優しく抱きしめた。 「もう、大丈夫だ、」 「う、ぅう……」 神童は相当怖かったのか俺の胸で喘いだ。そんな彼の背中をさすってやる。耳元で「拓人」と呼ぶと彼はゆっくり顔を上げた。目からは涙がボロボロと落ちてゆく。 「何があっても俺が守るよ」 そんなことを言うと神童は嬉しそうに笑った。俺は彼に優しくキスをする。 君のことを守ってあげる (俺がお前のヒーローだ) ---------- 蘭拓です、 不良に絡まれてる 拓人を蘭ちゃんが助けるお話です! 蘭ちゃんは本当にカッコ良くて 拓人も惚れ直しますな(笑) 素敵なリクエスト ありがとうございました またよろしくお願いします!! 120120 |