ちぇ、と拗ねたような声を洩らせば南沢さんに頬に口付けられた。焦るなよ、ちゃんと相手してやるから。そう妖しく目を細める南沢さんに生唾を飲む。こんなの、ただの生殺しじゃないか。と、いつもは思う所だが今日のオレにはホラー映画と言う最強武器がある。南沢さんを取って食ってやるぜ!


「くらまぁ、早くDVDセットしてよ」

「あ、はい」


ちょいちょい顎で使われる位めげない。その分体で返して貰えば良いだけだ。DVDをセットして、部屋の電気を消す。ベッドの下に降りて、ベッドに寄り掛かりながら画面を見つめる南沢さんの隣に腰掛ける。本編が始まる前に予告が流れる中、南沢さんの横顔をちらちら盗み見た。暗い室内で唯一の明かりであるテレビが南沢さんの白い肌を淡く照らし出して何だか不思議な雰囲気を漂わせる。


「…何テレビも見ないで人の顔じろじろ見てんだよ」

「あ、バレました?」


バレバレにも程がある、と南沢さんはくすくす笑った。普段は意地が悪かったりエロいだけの南沢さんだけど、柔らかい表情はとても綺麗で可愛い。オレはまたキスがしたくなって二人の間に手を付いて顔を近付ける。と、次の瞬間不穏なBGMが流れ始める。ホラー映画が始まったのだ。と言ってもまだ冒頭部分、これがホラーだとは幾らなんでも気付かないだろう。オレが先程されたように南沢さんの目元に口付ければ、南沢さんは擽ったそうにやめろよと笑った。やはり可愛い恋人と映画を見るには自宅に限ると改めて思った。適度に暗い室内、淡く照らし出されるお互いの顔、漂う甘い空気。イチャイチャするには絶好のシチュエーションだ。


「南沢さ、」

『ねぇ、どうして私を置いていったの…』

「ひっ!」


唐突に響く大音量の女のどろどろとした演出掛かった声と、アップで映し出されたボサボサで髪の長い女の姿に南沢さんが悲鳴を上げてオレの体の後ろに身を隠した。…あれ……これは…。追い掛けられる主人公の「来ないでっ!」「いやあああ!」という悲鳴が聞こえる度に南沢さんはオレの背中に隠れてびくびくと体を震わせていた。


「お、おい…これ本当にオレが見たかったヤツなの…?」

『あの日からずっと見続けている夢の中で、私は彼女に捕まらないよう逃げ続けていた』


「絶対…うぅ…違うだろ…っ」











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