貴方に手を伸ばそうと思った。

だから手を伸ばした。

そしたら届いた。

触れられた。

温かい貴方は、予想以上に柔らかくて

「可愛い、」






「俺、サッカー部 辞めます」

何言ってるんですか、南沢さん。

俺は貴方に憧れて今までサッカーやってたんですよ。それをそんな簡単な言葉で終わりにさせようとか思ってませんよね?

「もう、付き合いきれません」

待って、待って……南沢さん。

俺は認めませんよ。何で、何で何で、

何で?

行かないでください。何で誰も止めないんだよ……三国先輩達、や神童……お前等があの一年側につくから……こんなことに、そうだ、あの一年のせいで南沢さんは辞めたんだ。あの一年さえ、松風さえいなければ、今まで守りぬいてきた俺達のサッカーは……

あの一年さえいなければ






「待って、待ってください!南沢さん!!」

彼の細くて柔らかい腕を掴む。

振り向いた南沢さんはどこか悲しい顔をしていた。

「なんだよ、お前か……」

「辞めないでください」

「……俺はもう辞める」

「辞めないでください」

「倉間、お前……なぁ」

「辞めるなよ」

南沢さんの腕を強く握る。

「何で、あんたが辞めなきゃいけないんだ!!辞めるならあの監督か松風だろ?!」

自分でもびっくりするぐらい大きな声で叫んだ。南沢さんはどんな顔をしているだろう。もう、どうにでもなれ、

「南沢さんは辞める必要なんかない……ですよ」

「俺は疲れたんだよ」

その言葉に目を見開く。

「あの監督にもあの一年にも……三国や神童、他の奴らにも……そんで」

ぐっと言葉を飲み込む音が聞こえた。

「お前にも、」

ああ、やっぱり言っちゃうんですね。

言ってしまうんですね、

時が止まったように動けない俺の肩をポンと叩くと南沢さんはフッと鼻で笑った。

「お疲れ様」






「可愛いくなんかない、」

冷たい貴方は、予想以上に硬くて

触れたと思ってた。

きっと届くと思った。

手を伸ばしてみた。

貴方はもう手を伸ばしても。

届かなかった。






















手遅れだった
(貴方はもう届かない)










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南沢さんが離脱しちゃったので、
でも……これは、ちょっと
倉間が可哀想





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