みんながいるから恥ずかしい、 そんなことは拓人だけじゃない 俺だって気恥ずかしいさ だからって、 「二人きりの時ぐらい……昔みたいに“蘭丸”って呼んでくれよ」 保健室のベットで目を開けて、少し落ち着いた拓人に言う。 拓人はまだ何か考えているみたいに涙をこらえている。 「早く……みんなを……」 「まだ入学式が終わったばっかりだと思うけど?」 拓人はキャプテンだから、とかキャプテンにしかできないからとか……責任感が強い。 最初は単に自慢してんのかと思ったけど、そうじゃなくて口にすることで自分を保っていたということに最近気づいた。 (全く、) もうちょっと俺だけでも頼ってほしい。 「俺……本当に、化身を?」 拓人は涙をいっぱいに溜めた目で訊いてきた。 ああ、涙が零れそう。 「うん、そうだよ」 「……つ 剣城は?」 「どっかいった……入学式にでも出てたんじゃない?」 「そう、か」 ああ……もう、 「あんまり自分を責めるなよ 拓人」 「き 霧の… 「蘭丸って呼んで」 拓人をそっと抱きしめる。 「キャプテンはお前だよ うん、それはいい でも俺達に頼っていいんだよ」 「……ぅ……うん」 「今回はお前だけの問題じゃないんだ」 「……うん」 「もしかしたらみんなサッカー部をやめるかもしれない」 拓人はびくっとなった。 「でも拓人 俺はやめないよ」 「ら、らん…丸?」 「きっと、三国先輩もやめないと思うし、他のみんなだって……南沢先輩とか」 「……うん」 「だから 自分のせいだとか思うなよ……いっそ拓人が化身を出さなかったら雷門サッカー部はなくなってたと思う」 拓人は自分のせいでこんなことになったと思っているみたいだけど拓人がいたからこそサッカー部は廃部にならなくて済んだのだ。 (俺達は拓人に感謝しなきゃいけないのに) 「みんな、や やめない……かな」 拓人が不安な顔で首を傾げたから俺はそっとキスをした。 「大丈夫、」 にこっと笑ってやると拓人もにこっと笑った。 「大丈夫、だよな」 大丈夫、俺がついてる (裏切らない、裏切れない) ********** 保健室で二人きりとか…… もう本当に社長がすき! |