例えばココアのような


















「風丸の家で借りてきたDVDを見ようよ」

そう提案した本人は、本編が始まるや否やすっかり眠りに落ちたらしい。クッションを抱いて膝掛けを軽く握り締めながら緑川は、くたんとソファにもたれている。独りで続きを観るのは大変忍びないので俺は日を改めようと合点し、プレーヤーとテレビの電源を落とした。
しん、とした部屋には二人分の呼吸音だけが残っている。そっと緑川を起こさないようにしてシェアしていた膝掛けから抜け出す。別にこのまま隣で俺も寝落ちしても良いのだが、どうせならココアでも啜りながら恋人の愛らしい寝顔を見る方が良い。

控え目な陶器の音に起き出さないかヒヤヒヤしながらココアを淹れる。気分的にホットが良いな。
再び幾分狭くなったソファに戻り、当初の予定通りココアを飲みながら緑川の寝顔を眺める。ふにゃん、とした幸せそうな表情に俺も目を細める。

どんな夢をみているのだろう。二口目の甘くまろやかな味を楽しんでいると、ココアの香りに気付いたのか緑川は小動物の如く僅かに鼻をピクリとさせた。

「んー…」
「起きたか?」

姿勢を試行錯誤しながらも整えた彼は眠そうな目で俺を見た。時折瞼が落ちては跳ね上がる。

「いいにおいー…」

するすると近付いた緑川は俺のマグカップを覗き込んでココアの存在を認めると「おいしそう」と腕にしがみついた。

「飲むか?」
「うん」

差し出すと両手で包むようにして容器を支え、小さく一口飲み込んだ。

「あまくておいしい」

カップを俺に返した彼は再び微睡(まどろ)み始めた。

「ねむいからねるー…」

今度は俺にしがみついて寝息をたて始める緑川に幸せの溜め息をついて、残ったココアを飲み干す。次は一緒に夢の世界にでも旅立とうかな、なんて考えながら迫り来る眠気に誘われて目を閉じた。










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「Ptolemy」の猪口モカさんから
1000hitフリリク文でいただいた風緑です

ココア飲んでる二人が
もう可愛いくて可愛いくて仕方ない!!
素敵な風緑ありがとうございました!




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