Don't sandwitch me! 「………」 「………」 轟々と存在しない業火が俺の両側で燃えている。その炎を背に纏っているのは。 「…ヒロト、風丸。好い加減仲直りしよう、ねっ!」 こうなったのには深ーい事情があるわけで、それは約十分前に遡る。 ☆・☆・☆・☆・☆ 俺は美術で課されたスケッチの宿題を終わらせるべく公園の噴水前のベンチに座っていた。描いては消し、描いてはまた消しの繰り返しをしている最中だ。 「やぁ、緑川。…ん?スケッチ?」 ヒロトが通りかかって声を掛けてきたのだ。事情を話したら彼はにこやかに「休憩にしよう」と微笑んで、向こう側にあるクレープの出店に行ってしまった。 さて、ヒロトがクレープを調達している時にもう一人、俺に声を掛けた人物が居た。 彼こそ風丸一郎太である。 「緑川、こんなところで何しているんだ?」 「あっ、風丸!」 一度だけ写真で見たことがある、陸上部時代の橙色のランニングシャツ姿の風丸はどうやらこの公園をランニングコースにしているらしい。 スケッチに最適な場所がどうのとか、そんな話をしていた時。 「あれぇ、風丸君じゃないか。緑川に何の用?」 「そっちこそ、そのクレープは何なんだ?」 運悪く二人は鉢合わせた。ああヒロト、髪の毛逆立ち始めてるよ…って風丸もポニーテールがふよふよ浮いてきたんだけど。 無言の睨み合い。こうして今、俺は笑っていない笑顔に挟まれ、その体感時間は約一時間。実際の時計は五分しか進んでいないから、どれほどの緊張感か分かって頂けたかと思う。 張り詰められたピアノ線がぶち切れる寸前だった。 「どこに隠れているんだ、ヒロト!」 「風丸先輩ー何処に居るんですかぁー?」 神々が光臨なさった、俺は思わず感動で涙が出てきた。神々―もとい八神さんと宮坂君のお言葉を捉えたヒロトと風丸は一時休戦と手を取り、一目散に走り出した。 ホッと息をついたのも束の間、向こうに居た神達は俺を見つけた途端に猛ダッシュで此方に向かって来て。 「おい緑川、」 「ねぇねぇ緑川、」 再び激しい炎が俺を包み込んで。 「ヒロトは」 「風丸先輩は」 『何処に行った?』 嗚呼いっそ背面の噴水に飛び込んでしまえば地獄の業火に灼かれず済むのかなぁ、二人に揺さぶられ詰問されながら暢気に考える。美術の宿題は終わりそうにもなかった。 --------------- 「Ptolemy」の猪口モカさんから 10000hitフリリク文でいただいた 風→緑←基です あわわ、おいしすぎます! 緑川を取り合う二人も可愛いし 困ってる緑川も可愛いです! 可愛い三人をありがとうございました! |