歪な三角形



















※d→p→c→d





ポッキーの日に、兄弟でポッキーゲームという遊びをやってみた。

あの日から少し、兄弟関係がギクシャクしてしまっている


朝、いつもだったらポッドがデントを起こしに来るはずなのに、最近はポッドがデントを起こしにやって来ない

鳴り止まない目覚まし時計にゆっくり手を伸す。ベッドの中から手探りで探っていると、目覚まし時計はガシャンと音を立てて落下した。

「‥‥‥」


デントはむくりと起き上がり、時計を拾い上げるともそもそとベッドから這い出して、寝巻きを脱いでクローゼットから取り出した新しい服に袖を通す。

(ポッド‥今日も来てくれなかったな)



「お、おはよう」

先にテーブルについていた二人に、いつもの様に挨拶をしようと心がける。でも、意識すればする程わざとらしい声が出てしまう

「‥はよ」

「おはよう、デント」


会話はそこで途切れてしまい、沈黙の中で朝食を摂る。しかし気まずい空気の中では食べた気がしない

デントが二人を見やるとコーンがその視線に気付いてどうしたのと、優しく問い掛けてくる


そんなコーンを見て不機嫌になるポッド

(また、空気が重くなった)



あの日からずっとこうだ。原因は、ポッキーゲームの最後でコーンとデントの口が触れた事


三人は三人とも一方通行な恋愛感情を持っている

デントはポッド、ポッドはコーン、コーンはデント


正に綺麗なトライアングルを描く三人の気持ち。

それでも今まで三人の関係は何の問題はなく、ある程度の距離で均等に保たれていたけれど、今回コーンとデントの距離が近くなりすぎて三人の関係が崩れてしまった。

コーンがデントに対して何かすると、ポッドが不機嫌になり、デントはそんなポッドに戸惑っている。そんな関係


気まずい朝食が終わってから、三人はいつもの様に仕事についた



「ポッド、コーンの話し聞いてた?」

「聞いてた。デントにあたるなって言うんだろ?」


仕事の合間、コーンがひそひそとポッドに耳打ちをした。それは、最近デントへの態度が少し酷いのではないかという事

「デントが可哀想だよ‥」

ポッド自身、いい加減にしなくてはいけないという事くらいわかっていた。

けれど一度あんな態度をとってしまってから、ポッド自身一体何処で収拾をつけたら良いのかわからなくなっていたのだ


「俺だって、わかってるよ‥」


頭ではわかっているのに、収まりがきかない。ポッドは、そんな自分をどうする事も出来なかった



「デント‥」

コーンの一言で現実に引き戻されるポッド

「デントがどうかしたのか?」

「あれ」


コーンが指差す方には確かにデントが居る。彼は脚立に登り、高い棚から何かを降ろそうとしているみたいだ

コーンとポッドが見守る中、デントは脚立の上で棚にある何かと格闘している様子


(何やってんだアイツ‥)

突然、脚立に上っているデントの体がぐらつき始めたのを見てコーンが青ざめる

「デント、危ないよ。早く降りた方が‥」

「え?」


コーンに話し掛けられた事でデントがそちらに注意を向けた時、棚の上からヨーテリーが一匹デントの手に捕まれたまま飛び出して来た


「うわ、っ!」

ヨーテリーに引っ張られ大きく重心が後ろに傾いたデントは、そのまま脚立から投げ出されて床目がけて落ちていく

「デント!」

「くそっ、間に合え‥!」


デントが投げ出されるのと同じタイミングで、ポッドが反射的に走りだす

間に合わないかもしれない‥そう思った瞬間ポッドは落ちてくるデントを庇う為に、身を投げ出して床とデントの間に飛び込んだ。



「──‥っ!」

「痛‥、え‥ポッド!?」


デントは自分の下敷きになっているポッドを見て、驚きの声を上げる

「あー、‥悪いんだけど‥一旦避けてくれないかな」

ポッドのこの言葉にデントが慌てて立ち上がった


ポッドは体でデントを受けとめた衝撃で一瞬中身が飛び出るのではないかと錯覚したが、そんな事はなかったようで、そしてデントも無事だったみたいで、ほっと胸を撫で下ろし起き上がる

ふと、デントを見ると彼の腕にはヨーテリーが一匹。そのヨーテリーの瞳は赤い


「俺の、ヨーテリー‥何で‥」

「ヤナップと遊んでたみたいなんだけど、棚に上って降りられなくなっちゃってたみたいなんだ」

つまりデントは、棚から降りられなくなったポッドのヨーテリーを降ろしてあげようと脚立に上った訳だ

「‥ありがとな」

ポッドがお礼を言うと、デントがにこりと微笑んだ


「ナップ!」

何処からともなくトコトコとやって来たヤナップを見つけて、ヨーテリーが嬉しそうにキャンと鳴くと、デントの腕から飛び降りヤナップと遊びに行ってしまった


二匹を見送ると気まずい沈黙が訪れる。何か話さなくては、そう思い口を開こうとした瞬間


デントとポッドは二人揃ってコーンに、ぎゅうっと抱き締められていた


「怪我、しなくて良かった」

「コーン‥」


二人を抱き締めるコーンの腕が震えている。デントが脚立から落ちそうになった時、コーンは動く事が出来なかった

代わりにデントを庇った事で下敷きになったポッドを見た時、心臓が止まるかと思った。デントとポッドに何かあったらと、不安で仕方がなかったコーン


結果として二人には怪我一つなかったけれど、一歩間違えれば二人とも大怪我を負っていたかもしれないのだ

「二人とも馬鹿だよ」


涙で潤んだ瞳で睨まれては反論する事が出来ない

デントとポッドはコーンの頭を優しく撫でてやりながら、ごめんと謝る。

するとコーンがポッドを見て言った


「コーンに謝るんじゃなくて、デントに謝って」

「え?」


その言葉に反応したのはポッドではなくデント。どうして自分に謝れと言っているのかいまいちわかっていない彼を余所に、心当たりのあるポッドが罰の悪そうな顔をする

ずっと意固地になっていた自分を反省している彼は、ゆっくりと話し始めた


「最近キツい態度ばっかとってて、ごめん‥お前が嫌いな訳じゃないんだ」

ただ、ちょっと拗ねていただけ。それでも相手を傷つけていた事に違いはない

胸が締め付けられるみたいに、罪悪感でいっぱいになる心

黙って聞いていたデントは、今度はポッドを撫でるといつもの穏やかな笑顔を見せた

「良いんだ。それより僕の事、庇ってくれて有り難う」

「デント‥」

そこで思い出したように一言

「あ。また明日から、起こしに来てくれると嬉しいな」


彼の言葉でギクシャクしていた空気が、一瞬にして柔らかい物へと変化する。ポッドとコーンはクスリと笑い、こういう所がデントの凄い所なのかもしれないと思った



次の日の朝

「はよ、起きてるか?」

数回ノックをした後、ドア越しに声を掛けるが返事はない。やれやれまたかと呆れて、ガチャリとドアを開けた


「起きろデント、朝だぞ」




今まで通りのを迎えた日。それはいつもの日常にった瞬間










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「すかいぶるー」の碧さんに
10000hitフリリク文としてリクエストさせて
いただいた三つ子です^ω^


ポケモンだと三つ子が大好きなんです!
とくに片想いが!!←
だから碧さんにリクエストできたことが
凄い嬉しいです!

片想いな三つ子は本当に可愛い……
素敵な三つ子、ありがとうございました!




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