短編 | ナノ


▼ 道秋



※MOR2巻ネタバレあり
※リバくさいし短い




「ってぇー!お前もっと優しくしろよ!」
「これでも十分優しくしてる」
「いでぇーー!!!痛ぇ!お前わざとやってんだろ!!」

あのストレインの馬を無事(?)捕獲したあと、道明寺はよっぽどあの馬に顔面を2度も蹴られたことに腹を立てていたらしく、帰りの輸送車の中で忌々しいストレインめ、と舌打ちをしながら大人しく俺に応急処置をされていた。道明寺のまあまあ綺麗な顔に傷があちらこちらについていて、痛々しいのだが形が馬の足形であるのでやはり笑いがこみ上げてきてしまう。それを察したようにじろりとこちらを睨んだ。

「笑うな」
「悪い。お前の顔が面白いからさ」
「負傷したやつに面白いとか言うか普通」
「学習しないで性懲りもなく馬に近付いたお前も悪いと思うけど」
「…う、……お前そういうふうに何も言えなくするの得意だよな」

頭がいいと得をするな、と口を尖らせる。そんなこというお前も一応いい大学出てるだろうが。
手当てが終わって救急箱から出したものを片付けていると、口元にガーゼを貼り付けられた道明寺が喋りづらそうに、なあ、と俺の背中に声を掛けた。

「ん?」
「俺、あの時血が上って一瞬の感情だけで抜刀したこと、少し反省してるんだ」
「道明寺…」
「お前に止められたとき、正式な公務だとかなんとか言ったけどさ、もっと話しあえば吠舞羅の連中もわかってくれたのかな。結果お前も抜刀したし始末書書かなきゃいけなくなっちゃったし…」

今回の騒ぎをまあまあ反省しているらしい。確かに道明寺は突っ走りやすいところがある。性格においても剣術においても出ずっぱりなとこがあって、不思議とそれが計算されたような無茶で、俺には出来ない。そんなことが出来ない俺には道明寺が少し羨ましかった。そこを閉じ込めてしまえばそれは凄く勿体無いことだと思った。

「確かにお前は後先考えないし感情で動くとこあるけど、俺はそんなとこも含めてお前のこと好きだよ」
「え、」
「それがお前の持ち味だし、本当に危ない時は俺がストッパーになるし守ってやる。」

パシリと道明寺の手を掴むと嬉しそうに笑って、おう!と俺の手を握った。そして急にぐいっと引っ張られて抱きしめられる。

「わ、ちょっ、」
「ありがとう」

いつにもなく低くて男らしい、優しい声音にドキリとする。うるさいくらい音が鳴る心臓の音を知られたくなくて、引き離そうとグイグイ押すが、それは道明寺の馬鹿力で阻止された。

「…離せよ」
「やだ。疲れたから充電」

ぎゅうう、と抱きしめる力が強くなる。苦しくて息がしづらくなるぐらいだったけど、まあこんな時くらい甘えさせてやってもいいかななんて。
それから運転していた日高がバカップルと呟いたのに赤面した俺が引っ張がすまで道明寺は離れなかった。


「秋山さんは道明寺さんに甘すぎます!ちょっとこっちの身にもなってください」
「悪かったって…」
「なんだ日高羨ましいのか?2秒くらいなら秋山貸してやってもいいぞ」
「え」
「え?」
「…日高お前秋山のこと」
「わー!わー!違います違います!!」






これから始まる道秋←日下さい




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