放課後、俺は五島に理科室で待っているように言い、(勝手に帰ってもいいといったのだが俺に憑いてないと自由に出歩けないと言われた)図書室に向かった。
その目的は五島について調べるためだった。あいつに自分から訊くのはなんだか癪に障るから自分で調べることにした。我ながら面倒くさいやつだと思う。でも直らないのだ。

図書室は冷房がきいていて廊下と違って涼しかった。勉強しているやつが数人いるくらいで、騒がしいやつはおらず、静まり返っている。

とりあえずあの五島のコスプレみたいな服が何処の制服なのかを調べることからはじめることにした。だがあんな制服見たことない。どうやって調べようか。

「何を探している伏見」
「!」

いきなり声をかけられて驚いてガラにもなく肩を跳ねさせてしまった。振り向けばそこには夜刀神の姿が。

「ああ…ちょっと調べ物。お前は何してんの。いつもの後輩の奴と一緒じゃないの」

なんでそいつのことを知っているんだ、という顔をする夜刀神。といっても、こいつは普段後輩の伊佐那という奴とつるんでいることで有名だ。あまりにもベタベタしている(あくまで伊佐那の方からだが)ので学校内ではまあまあ有名なことなのでそれは周知の事実だった。当人たちは自覚無しなのだろうが。

「ああ…今日はあいつが委員会だからな。先に帰っていいと言われた。でも図書室で待つことにした。いつも俺が委員会の時に待っていてもらっているのに俺が帰るのは些か不平等だと思ったからだ。」
「なるほどね…」

それにしてもこいつの武士みたいな喋り方どうにかなんねーのかな。慣れない。

「……あ、そう言えば夜刀神お前歴史詳しかったよな」
「ああ、まあ好きだしな」

使えるやつ発見。もしかしたらあの青い服について知っているかもしれない。

「お前60年前の日本の歴史わかるか?」
「ああ、そこならすごく得意だぞ。俺達が習うのは三学期からだがその時代が面白くて予習していたからな」
「それなら尚更有り難い。ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
「なんだ」

立ち話がそろそろ疲れてきたので夜刀神に座らないかと無言で合図して近くにあった椅子に二人して腰かけた。

「青いなんかコスプレみたいな制服がなんの制服なのか知りたくてさ。お前なんか知らねえ?」
「ああ、青服といえば…その時代の警察みたいな機関のセプター4という組織じゃないか?」
「セプター4?」
「ああ。この時代は強大な特殊能力…つまり超能力のようなものを持った人間、''王''とその王の力を分け与えられた配下の''クラン''が存在していたらしい。セプター4もその王を中心とした組織の一つだ。王は7人存在し、黄金、白銀、緑、赤、青、無色とそれぞれの色に別れていて、中でも黄金の王は日本の政経を動かしていたすごい人物らしい。今の高機能で便利な世界はこの時代の黄金の王が作ったと言っても過言ではないだろう。ああちなみにセプター4は青だ。」
「…なんか複雑でよくわかんねえな……」
「簡単に言えば王族が日本に7つあったと考えればいい。それから…」

本当に好きなようで別に知りたくもないことまでベラベラ話し始めた。やばい眠くなってきた。
眠気を覚ますように自分の頬を軽く叩いてあと一つ気になることをきいてみた。

「なあ、話の途中悪いけどなんでこの王、って存在は無くなっちまったわけ?」
「それがわからないんだ。歴史の教科書にもどの本にも載ってなくて、その存在が消滅された理由も原因もなにもわかってない。それどころか政府は王という存在を無かった事にしようとしたらしい。元々王は一般市民には浸透していない存在だったらしいしな。」
「詳しいな……」
「こんな面白い歴史ないだろう。調べていたらいつの間にかこんなにベラベラ話せるようになったんだ。」

ベラベラ話してる自覚はあったらしい。ガタリと席を立ったと思えば歴史の辺りの本棚から1冊本を探し出し、腰掛け直して俺の前に本を置いた。

「これはセプター4について一番詳しく赤裸々に書かれた書物だ。王は何回か変わっているが貴様が気になってるセプター4は誰が王だった時代なんだ?王が変わればクランや組織の体制も丸々変わるからな、絞り出した方が調べやすいだろう。」

ページを捲ればそこには青い制服を着た若い男の人が立っている写真があり、五島が着ている制服とは少し違っていた。どうやらこの写真は当時の隊員ではなく復元した隊服をモデルが着ているらしく、何着かデザインの異なる隊服があった。何回かページを捲っていけば、五島の着ていた制服を見つけた。
王の名前は宗像礼司、その下に隊員の名前が書かれていた。

「……マジだったのかよ…」

そこには秋山先生の名前も確かにあり、俺の名前も書かれていた。同姓同名。なんだか嫌に背筋が冷えた感じがした。
五島の名前も見つけた。五島蓮、特務隊所属、20歳で殉職…こいつはどうしてこんな若さで死んだのか。詳しく読むと特務隊は青の王直属の部下らしいので無能だったわけではないだろう。少ししか一緒にいなくても器用で世渡り上手であろうことはわかる。それなのに何故…

「目当ての文献は見つかったか」
「あ、ああ…見つけた。サンキュー」

すっかりこいつの存在を忘れていた。お礼を言えば満足そうに笑ってまた困ったらいつでも聞けと鼻高々に言い放った。

「クロー!こんなとこにいた!待ってなくてもよかったのにー」
「たわけが。お前はこんな時待つだろう。それなのに俺だけ置いていくわけにはいかない。」
「変なとこ律儀だよねーほんと。あれ、一人じゃなかったんだ。」

目線をこちらに変えられ少しギクリとする。俺はこういう自由人というか電波みたいなやつは苦手だ。最も俺がコミュ障というのが一番の理由だが。

「…あ!思いだした!伏見先輩!」
「な、なんで知って」
「女子がキャーキャー騒いでたんですよー結構人気あるみたいですよ伏見先輩ー」
「あ、そう…」

適当に返事を返せば伊佐那の興味は逸れたらしくそそくさと夜刀神と共に帰っていった。俺も理科室で待ってるであろう幽霊を迎えに理科室へ向かった。

この時に置いて帰るという選択肢を生み出せなかった時点で俺は五島になんだかんだで心を許していたのかもしれない。






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