俺が君から離れたのは君を傷つけたいからじゃなかった。ただ君に守られてずっと子供扱いされて生き続けるのが嫌だった。広い世界を、他の国みたいに君と同じ目線で、他の国と同じような扱いをされたかった。
この感情は君を兄だと思う情をかき消すと共に、兄弟愛とは全く別物な感情が芽生えさせる原因だった。
今日は定期的に行われる世界会議の日だった。ホスト国はドイツ。いつもならハイテンションで向かっているはずだが、今日はなんだか頭がボーッとして調子が出ない。
会議室に向かう途中、日本に会った。
「ああ…日本、おはようなんだぞ」
「おはようございますアメリカさん。おや、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
「朝からなんだか体がだるくてね…ちょっと不調なんだぞ」
「あらそれは大変…今日は休まれた方が…」
「いや大丈夫なんだぞ!世界のヒーローがいないと話が進まないじゃないか!」
HAHAHA!と笑って言うと、日本は「無理なさらないで下さいね」と言いながら困ったように笑った。
「なんだあれは……この世の終わりか?」
「いやだよおおおおお!!!俺まだ死にたくないよおおおおおおドイツーゥウウウ」
「うるさい静かにしろイタリア!いやでもあれは確かに珍しい光景だな」
世界中が見て気味悪がっているその視線の先には、明らかにいつもの元気を失い、冷静に議題について説明するアメリカさん。いつもみたいに突拍子の無いことを言い出して誰かを困らすわけでもなく冷静に話しているアメリカさんはまさに誰コレ状態。
「やっぱり休まれたほうがよかったのでは…」
「なんだ日本、あいつがああなった理由を知ってるのか?」
「ええ…朝会議室に向かう途中に具合が悪いとおっしゃってました」
「なるほどな…」
「…という事が両国の意見と対立しているのだけど何か意見のある国はあるかい?」
「な…なあアメリカ」
「ああなんだ君か…何か良い案でも思い付いたのかい?」
「いや、お前今日変だぞ?風邪でもひいたのか?」
「何言ってるんだい?俺は普通だぞ?」
「いや嘘つけ!明らかに普通じゃないだろ!!」
殆どの国が思っていたことを代弁したイギリスさんの意見に頷く国々。その様子にアメリカさんは溜め息をつく。
「君たちは俺が大人しくしてても気に入らないのかい…」
言いながらアメリカさんはふらふらと倒れた。
「うおおおおおアメリカ?!!」
「大丈夫…なんだぞ…」
「嘘吐くならもっと上手に吐け!すごい熱じゃねえか!ドイツ、こいつを俺とフランスで医務室に連れてくから会議を進めておいてくれないか」
「ええええお兄さんも行くの?!」
「俺一人でこんな馬鹿でかいやつ運べるわけねえだろ。手伝え」
「うう…わかったよ…坊っちゃん本当横暴…グァッ」
「後はドイツ、頼んだ」
「ああわかった。運んだら15分以内には会議室に戻るように」
「わかった」
「はいよ〜」
3人が去った後、立ち上がって今日の議題について改めて説明しだすドイツさん。アメリカさんの異変に目が行きすぎてどこの国も議題について頭に入っていないと察したらしい。
少しアメリカさんの様子が体調不良とは別で変だったのが気になったが、会議に集中することにした。
「よっこらしょっと〜坊っちゃん運んでないじゃん〜もしかして会議サボりたかっただけー?」
「うっせえ髭むしるぞ。お前がこいつに手ぇ出さないようについてきたんだよ」
フランスがすっかり寝てしまったアメリカをベッドに寝かすと、俺は布団を掛けて濡れたタオルをアメリカの額に乗せた。
「手なんか出さないよ〜弟みたいなもんだしさっ」
「ふざけんな。こいつはお前の弟じゃない」
「お前の弟でもないだろ?」
「……こいつが俺を兄弟じゃないと思ってても俺は弟だと思ってる。」
手をパンパンとはたきながら俺に困ったように笑うフランス。
「……なんだよ」
「お前、本当こいつに甘いよな」
「…別にこいつだけに甘いわけでもねえだろ。お前が倒れても同じことした…」
あ、失言だった…と気付いたときにはもう遅くて、フランスはによによと気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「坊っちゃんもたまには可愛いこと言うんだなー!!!」
「ああああもう!!うっせえよ離れろ!」
俺に抱きつくフランスの脇腹を一発殴るとフランスは呻きながら「ごめんなさい」と一言言って後ずさった。
「ちょっとお兄さんトイレ…」
そう言いながら医務室の中にあるトイレにふらふらと入っていった。
「……ったく」
イライラしながらベッドの横にある椅子に腰掛けると、かけっぱなしだったアメリカの眼鏡が目に入る。
寝づらいだろうなと思って眼鏡を外して枕の横においてやろうとすると、眼鏡に触れた手を捕まえられた。
「ア…メリカ起きてたのか…」
「…ずっと起きてたよ。」
「まあゆっくり休めよ。お前バタバタしすぎなんだよ」
そう言ってアメリカの手をほどき、椅子から立ち上がるとアメリカはまた俺の手をひいた。
「アメリカ?どうしたんだ?」
「…俺がどうしてこんなに必死に働いているのか君にはわかるかい?」
「あ?そんなの国のためだろ?」
「それもある。でも殆どは君に追い付きたいからだよ」
「俺…?」
「なのに、君はいつまで経っても俺を弟にしか見てくれない」
傷付いたような表情を浮かべるアメリカに狼狽えてしまう。ああやっぱり俺はあいつの言う通り、アメリカに甘いのかもしれない。
「俺が欲しかったのは君との対等な立場だよ。
「そんなの………」
「…まだわからないのかい?」」
そう言いながら俺の腰に抱きつくアメリカ。
「君を愛してる。」
心臓が過剰に動きを速めたのは、いつもと違う声色に驚いたのか、それとも
end
prev next
back