裸の上半身にすがりつくようにデイダラの首元に腕を回すと、長い金髪が俺の鼻をざわざわと撫ぜた。ひやりとした布団が身体をこする。顔をぴたりとその首筋に寄せ、胸ごと乗っかり、脚を絡める。汗の匂いを嗅ぐ。たまらなく幸福な、熱く上気した気持ちになる。このままこの熱に身を預けてしまいたくなる。すべてはどうしようもなくもどかしい心臓のせいである。
 きゅっと下半身を握られる。んっ、と声が出る。
「気持ちいい?」
 ふふっ、と鼻で笑いながら言うデイダラが憎い。そう聞かれてしまっては、俺はうなずく以外に応じる術を持たないのに。
 奴の手が俺の硬くなったところをまさぐり始める。下着の上からなのにもかかわらずそれは恐ろしい程の刺激である。しゅるしゅると奴の手が上下に行ったり来たりを繰り返す。布が擦れてべっとりとはりついてゆく。俺はこいつが欲しくて、欲しくて、反吐が出るくらいに好きで、腹が浮いて、胸が突き破れそうで、いやだとか嬉しいとか思う間もなく射精をしてしまう。その後に襲ってきた脱力感によって、俺の身体はデイダラの胸の上から布団へと転げ落とされた。
「ふざけんなてめえ、勘弁してくれ」ひとつどすの利いた文句を言ってやろうと思ったのに、出てきた声は犬の唸りのように震えていた。
「何で。旦那気持ち良かったろ、うん?」奴は猫撫で声で笑った。
「そーじゃなくて」
 そう言って俺はするりと腕を伸ばす。デイダラの平たい腹に指を這わせば未だぬるい感触がした。素肌の脇腹を通る。その先の、露わにはなっていない股間に手を添えてみる。ここを繋ぐくっきりとした線は、俺を苦しく悩ましくさせる。それなのにデイダラは変わらない。平然としたままなのだ。
「オイラは疲れてんだ。任務続きだったろ?ずっとヒルコに籠ってやがる誰かさんとはちげーんだよ」憎まれ口を叩く余裕さえある。
「喧嘩売ってんのかテメェは」
 思わず溜息が出てしまう。なぜ俺はこんな奴が欲しくて仕方がないのか、自分でも馬鹿馬鹿しくて笑いがこぼれてくる。
 奴に口を押し付けキスをしながら、なんて馬鹿馬鹿しいキスなのだろう、と思った。俺が自らの中に詰まらせているのは、もはや恋とか性欲とか奉仕心とかそういった次元のものではないのに。ただ奴という人間の魂をまるごと抱きかかえたいような、重たい湖の底に沈みこんだときの水圧のような、行き場のない、逃げ場のない感情なのに。だがその感情は、奴と身体を合わせる以外に昇華しようがないのだ。それがもどかしくて仕方がない。奴はそんな俺をどのくらい察しているのだろう。泣き叫びたいほどこいつとひとつになりたいのに。
 こいつはきっと何もわかっていやしない。制しようのない生々しいこの心拍を、デイダラの堅い胸にも負担させてやりたいと思った。俺は悔しかった。みぞおちのあたりに穴でも開いたようだった。そしてその穴を埋めるように、目の前のそいつを抱きしめた。






201204

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