時々、すごく寝苦しいと思う事があって、そんな時オイラは、自分の上にかぶさっている布団の軽さが恨めしくなる。
 身体がうごかない。起き上がりたい。この毛布がもっと重い圧力をオイラにかけてくれていれば、きっと反発力で起き上がれるんじゃないか。起き上がっちまえば、きっと全身の隅々まで活力がみなぎって、寝なくても済む身体になるんじゃないか。そんな馬鹿なことを考えながら、オイラは仕方なく寝返りをうちつづけるのだ。
 部屋は暗くしてあって、瞼はもはや開けていたか閉じていたか思い出せないくらいだった。夢想と現実の境目があいまいになっていて、指先足先の感覚もよくわからなかった。だから、薄っぺらい布団以外の重圧が自分の上にあることに気付いても、しばらくはただ、いつも通りの寝苦しい夜が、少し形を変えてやってきただけなんだとしか思わなかった。

「は?だんな」
「なんだ」
「いや、何でオイラの上に乗っかってるのさ」
「やってみたかったから」

 光源は無いから目では確認できなかったが、チャクラの感じとか、雰囲気とか、においとかで、いつもと違うこの身体の重みは旦那に因るものだとわかった。作品の細部を造り上げるときのように、糸を紡ぐように、少しずつ自分の指先に触覚を戻していくと、サソリの旦那の手がオイラの手のひらに重なっているのを感じた。でも、だからといって、オイラとこの人は今更それに驚いたり緊張したり、ましてや顔を赤らめて喜んだりするような関係ではない。

「わけわかんねえ、うん」

 ようやく反応するようになってきた指先をぴくぴくと動かすと、旦那の手がオイラの手から離れた。旦那はそのまま身体もオイラの上から退けて、布団の脇に立ちあがる。そして多分、オイラを一目ちらと見下ろした。

 暗闇の中から降ってくる旦那の空気とか、声とかそういうものは、既にオイラの日常で、オイラはそれを吸って毎日を生きている。旦那だってきっと似たようなもので、オイラが旦那に触ったり、ちょっかいだしたり、面倒かけたりすることを、ある種の生活の温床みたいに思っていることだろう。だからこそ背中を預けるし、別行動もするし、必要以上の干渉を必要としないのだ。

「はやく寝ろよ」
「ん」

 部屋を出て行く旦那の後ろ姿を見送りながら、明日、オイラも旦那の部屋で寝っ転がってみようと決めた。ついでだから、昨日造った自慢のネタも持っていくことにしよう。






20110320
THE・落書きだったにも関わらず好評頂けて嬉しかったので残してみました。ありがとうございます

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -