「おっやじっ様ーーー!」
バーーーーン!
「ぱい、まだ朝の検診中よ!!」
ステイ!とナース長にぴしゃりと言われ、子犬のように終わりをじっと待つ少女は、つい先日たまたま立ち寄った島で出会った元一般人(?)である。
今は白ひげ海賊団の船員として立派につとめを果たしているのだが…一般人が何故仲間になれたのかというと。
「あらぱい、また海中散歩してきたのね?項の鱗に藻が付いているわ。シャワー浴びてらっしゃいな。」
「はーい!」
そう、一 般 人 と呼ぶには少々特殊だからである。項や額、腕など体の一部に鱗を持ち、頭部に角を持つぱいは海に入れば海王類、陸に上がれば人間という、海王類と人間のハーフであった。なお、この事を『両生類』と言うと真っ赤な目で襲いかかってくるので白ひげ海賊団内ではタブーとなっている。
「ふぃー、ホコホコするなあ。」
シャワーを浴び、海水や鱗についていた藻を洗い落としたぱいは再び大好きな親父様のもとへ向かう。
「おっやじっ様ーーー!(二回目)」
「グララララ、元気だなアぱい。」
既に検診は終わったらしく、部屋には白ひげ一人しかいなかった。そんな中、元気よくドアを開け放ちスピードを落とすことなく腹部めがけてダイブするぱいを白ひげは見事に受け止めて、角の生え際を優しく掻いた。
「ふわぁ〜親父様はゴッドハンドですね…!」
ふにゃあっととろけた笑みで話すぱい。すっかり当初の目的を忘れていたようだ。
「で、ぱい何か用でもあったんじゃねえのか?」
「あ、そうでした!忘れるとこだったあっぶねー。」
ぱいは徐ろに目の前に手を突き出し、満面の笑みでこう言い放った。
「おやじ様、トリックオアトリート!!」
「グララララ!そうか、今日はハロウィンか。」
先ほどのナースたちがぱいが来た時に食べてください、と置いていった白ひげでも両手で支えて食べるような大きなシュークリームが2つあったので一つを差し出せば目がキラキラと輝き出すぱい。
「シュークリームだ!!ありがとうございます!!」
はむはむと食べる姿はまさに小動物。色々なところをクリームまみれにしながら美味しそうに頬張るぱいを見て癒やされる白ひげであった。
その後、報告をしに来たマルコにクリームまみれのまま近寄ったら華麗に避けられた上に問答無用で風呂にぶち込まれるのはまた別の話である。