Happy Birthday!涯ver
ブブブ…
(あれ?お母さんからだ)
ピッ
「もしもし?どうしたの??」
「ごめんね、玲音。ちょっとお父さんが車とぶつかって怪我しちゃったみたいなの。それで入院しなくちゃいけなくなったからお母さんちょっと準備して病院行ってくるね。帰り遅くなっちゃうと思うからお祝いは明日になってもいいかしら?」
「えっ…う、うん。」
「ごめんね。お金は後で渡すからごはんも外で食べてね。それじゃ。」
ピッ
トゥートゥートゥー
「…私今日誕生日なのに、嘘でしょ?!」
誰もいない道端で玲音はひとり嘆き叫んだ。
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「朝から犬のう○こ踏むしカラスに頭蹴られるし自転車パンクして徒歩なうだしっ!!」
一人叫んで自転車を押す。決して近くはない家へ徒歩で向かっているため、辺りもすっかり暗くなっていた。
「もぅやだ早く帰りたい。ごはんとか別にあるものでいいし……」
暗闇に対する恐怖を誤魔化すためにも独り言を言いながら歩く。
(う…向こうから酔っ払いが来る…)
知らないフリ、知らないフリ、と逆方向を向いて歩く。が、駄目。
「お譲ちゃん一人なのー?」
「……。」
「無視はだめだよ、無視はぁー。一人じゃ危ないからおじさんが送ってあげようかぁー?」
ぎゅっ
「きゃっ!や、やめてくださ…」
急に抱きしめられ、拒絶しようにも震えて声が出ない。
「かわいいなぁー大人しくしててねぇーはぁはぁ…」
(嫌だ、怖いっ…誰か助けてっ……!!)
さわっ
男はスカートの中へと手を進める。
「ひっ…誰か…誰か助けてぇー!!」
玲音は気持ちの悪さに声を上げる。人気のない暗闇でその声が虚しく響き渡る。
と思われたが。
「ぐぁっ!!」
突然男が鼻を押さえてうずくまる。
「えっ?な…何っ?!」
がしっ
混乱している玲音の肩を何者かが抱く。
「早く去れ。次は失明するっ…!!」
「ちっ…なんだよっ!」
ダダダッ
ふらふらとした足取りで男は走り去っていった。
「あ、ありが…って涯くん?!」
お礼を告げるはずが、見知った顔に驚き声を上げる。
「大丈夫か?柳…」
その声に怯むことなく涯は心配そうに玲音を見る。
「う、うん…ありがとう…」
玲音は状況を把握しきれずきょとんとしている。
「暗くなってからこんなところを一人で歩いてたら危ないぜ…よっと。」
言いながら涯は玲音の自転車を立ち上げる。
「自転車、パンクしてて…それで歩いてたの。」
俯いたまま玲音は話し出す。
「そしたらお母さんから電話が来て、お父さんが事故にあったから病院行くって。だからごはんも一人で食べてって…」
「……。」
「私、今日誕生日なのにぃ…」
ボロッ…ボロッ…
散々な一日を思い出し、玲音は泣き出す。
「お、おい…泣くな……」
それを見た涯はどうしていいかわからず、焦りだす。
「涯くぅーん!!」
うわぁーんと泣きながら玲音は涯に抱きつく。
(うぅ…どうしていいかわからない…あ)
「柳、自転車ここにおいて俺の後ろに乗るか?良かったら送っていく…///」
「え…?」
「また襲われたら困るだろ?」
「…うんっ!ありがとう、涯くん!!」
「ほら、乗れよ。」
「うんっ!…あ、ねぇ涯くん。」
「…?」
「晩御飯ってもう食べた?」
「いや、まだ…」
「じゃあさ、一緒にどこかで食べていこう?お礼におごるから!!」
「いや、でも……」
「何より私が一人で食事したくない…ダメ?」
泣き止んだはずの玲音の目がまた潤みだす。
「わかった…わかったから泣くなっ…!!」
―――踏んだり蹴ったりな今日だったけれど、何より涯くんと過ごせて幸せな誕生日になりました。
Happy Birthday Dear 玲音さん!
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(ところで涯くんは何してたの?)
(夕食の買出しに…)
(へぇー何買ったの??)
(コレ…)
(の…のりたまっ!!)
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あとがき
11/8誕生日の友人Mに捧げます。
如何でしたでしょうか??
誕生日夢ってこんな感じでいいのかな…
でも襲われてるところを涯くんに助けてもらうのって憧れるよねっ!笑゛
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