微熱


「いらっしゃいませ。あ、こんにちは!いつもの奥の席空いてるのでどうぞー!」
「あ、ありがとうございます、」


時間は午後二時。
時間帯的にも人が疎らでございました。
ここは、私が仕事の時にはほぼ毎回と言っていい程にランチを食べに来ているカフェにございます。元々ふらりと入った場所なのですが、落ち着いた雰囲気のカフェでコーヒーが美味しい所が気に入っておりました。本日は車両や人的トラブルが多く少々疲れておりました。それでも私が此処に来ているのは気になっている方がいるからなのです。

「お決まりでしょうか?」
「えぇ、本日のランチをお願い致します。」
「かしこまりした。ドリンクは食後にモカのブラックでよろしいですか?」
「はい、いつもありがとうございます。」
「ふふっ、こちらこそです。」

そう、彼女こそが私がお慕いしているヒメ様でございます。とはいってもお名前は他のスタッフの方がそう呼んでいるところを聞いたから知っているだけで、私は彼女のことを何も知りません。ですが、彼女の眩しい笑顔や愛らしい立ち振る舞い、楽しそうにお仕事をしていらっしゃるところを見ると胸が締め付けられるばかりなのです。
よく此処へ来ているおかげで、私の顔といつも頼むドリンクを覚えて下さっています。それだけでも私からしたら大きな進歩でございます。(クダリには散々ヘタレと言われましたが...)

それからランチを頂いて、食後のコーヒーを待っておりました。ヒメ様がトレンチにコーヒーを乗せて此方に歩いて来ているのが目に入り頬が緩むのが分かりました。本日も大変可愛らしゅうございます。

「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」

ことり、と静かに私の前にソーサーに乗ったカップを置きました。挽き立ての豆の良い香りが致します。何か話すきっかけをとぐるぐる考えていたところ、「あの...」と控えめに声を掛けられ心臓がびくりと跳ねました。

「はい...?」
「甘いものはお好きですか?」
「えぇ、好みますね。」
「良かった!ガトーショコラを作ってみたので宜しければいかがですか?」
「...!是非頂きたいです。」

まさかヒメ様の手作りのお菓子を頂けるとは!ですが、此処のカフェにはガトーショコラはなかった筈です。純粋に気になったのと、もう少し彼女と話がしたいという私の邪な気持ちで尋ねてみました。

「今度デザートメニューで出そうと考えていたので試作品なんですよ。それと、えと、今日は少し疲れているみたいだったので、疲れにな甘いものが一番だと思いまして私からのサービスですっ」
「...っ、」

頬を赤らめながらそう伝えて下さいました。ど、どうしましょう...!私自惚れても良いのでしょうか?まさかそこまで気付いて下さっていたとは大変嬉しく思います。

「あのっ、私そろそろ戻りますね!」

喜びの余り言葉を発することが出来なかった私を見てか、そそくさとキッチンの方へ戻ろうとしておりました。私は居ても立ってもいられなくなり、慌てて彼女の腕を掴みました。

「ヒメ様!」
「は、はいっ!」
「本日は何時に上がる予定でございますか?」
「えっと、今日は18時です...」
「その頃にもう一度伺っても宜しいですか?」
「は、はい.、大丈夫です...」

顔を真っ赤にして私を見上げながらしっかり頷いたヒメ様を見てやはり私は自分が思っている以上に彼女のことをお慕いしていることに気付きました。どうか貴女に私のこの気持ちを伝えさせて下さいまし。

「サブウェイマスターさんは今日はお仕事終わったの?」

立ち尽くしている私達に此処のカフェの店長と思わしき女性が声を掛けてきました。店内でスタッフにこういったことを申し上げてはいけなかったのでしょうか...!ひやりと背中を冷や汗が伝いました。

「えぇ、本日は業務は終わっております。」
「そ。じゃあヒメちゃん着替えておいで。」
「え?」
「今日はもう上がって良いよ。サブウェイマスターさんがお話あるんでしょ?」
「マスター...!ありがとうございます!」

ぱたぱたと裏へ掛けて行く彼女を視界の端に入れながら、店長様に向き直り感謝の言葉を伝えました。

「本当にありがとうございます。」
「いーえ。どういたしまして。その代わりうちの看板娘をしっかり大切にしてよ?」
「必ず守って見せるとお約束致します。」
「宜しくね。ヒメちゃんが来るまで座って待ってなよ。」
「お言葉に甘えさせて頂きます。」

再度席に腰を下ろし、少し冷めてしまったコーヒーを飲みながら彼女にどの様な言葉で私の気持ちをお伝えしようかを考えることに致しましょうか。



微熱
「ヒメちゃん良かったねー。いっつもサブウェイマスターさんが来ると嬉しそうにオーダー取りに行ってたもんねぇ。」
「マ、マスター!!」






*****
リツ様へのキリリクのノボリ夢でした!
お任せでとのことでしたので、カフェの店員さんとノボリさんにしてみました^^今までは恋人設定が多かったのでたまには付き合う前の二人でもと思って書きました!お気に召して頂けたら幸いです(*´∀`*)リクありがとうございました!






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