doating.

バトルトレインを下車して執務室まで帰っているところでございました。私の20メートル程先にヒメ様がいるのが目に入りました。私のいる位置までは声は聞こえてきませんでしたが、彼女はどうやらお客様にホームの行き方を教えているようでございました。
別にそれだけなら良かったのです。鉄道員として当然のことだからです。しかし私は相手の男性の方の下衆な笑顔がどうも気に掛かって、足が執務室へ向かうのを拒むのです。

ヒメ様と私はお付き合いをしております。誰にでも優しく、愛想が良く、笑顔を振りまくのは勿論彼女の良いところだと存じております。只、彼女には少し自覚が足りないのです。元々殆どが男性の鉄道員、バトルサブウェイを利用する方も最近は女性の方も増えてきましたが、まだまだ男性の挑戦者の方が多いのも事実です。

しばらく何かを話した後に、その男性のお客様がヒメ様の肩を抱いてどこかに連れて行こうとしました。どうしてこう悪い予感というのは的中するのでしょうか。私は我慢出来なくなり二人に近付きました。

「お客様、
鉄道員にそのようなことをされては困ります。お引き取り願えますか?」

お客様の腕から彼女を奪い取り私の方へ引き寄せます。何か言いたげにこちらを見ているお客様に「まだ何か御用ですか?」と一睨みすると足早にどこかへ去って行きました。

「あれ?お客様どこかに行っちゃいましたね。シングルトレインに連れて行って欲しいって言ってたのになー。」

いつも通りのゆっくりとした口調でそう言う彼女にぷつんと何かが切れたのが分かりました。ヒメ様の細い手首を掴み、ATO管理室へ連れ込みました。素早く鍵を閉め、ドアにヒメ様を押し付けました。痛いという声が聞こえてきましたがしばらくは離してあげれそうにありません。

「あの、ボス!いきなりどうしたんですか?」
「二人きりの時はボスではないでしょう?」
「ノボリさん...」
「良い子です。
ですが、先程のヒメ様は悪い子でございます。」
「わたし何も...!」

やはり分かっていらっしゃらないのですね。何度も申し上げましたのに。貴女のことを好きで、大切に思っているのは私だけのようではないですか。堪らなくなって更に強い力で彼女の両手首をドアに押し付けます。

「いたいです!」
「以前から再三申し上げておりますよね?貴女は危機感が足りなさ過ぎると。どうしてそんなに無防備なのです?もう少し周りが貴女をどんな目で見ているのか気付いて下さいまし。」
「ノボリさん怖いです...っ」

じわっと潤んできた彼女の目と視線が交差しはっとしました。私は何をしているのでしょう!慌てて彼女の手を解放すると、そこは私が掴んだ痕がくっきりと残っていました。ぽすんと私の胸に飛び込んできたヒメ様を抱き留めます。

「あのっ、ごめんなさい!もっとちゃんと気を付けるようにします。だから怒らないで、わたしのこと捨てないで下さい、」
「捨てるなど有り得ません。貴女を手放す気なんて更々ございませんので。」

捨てないで、などどうしてそんなに可愛らしいことばかり言うのですか?これ以上私を溺れさせる気ですか?彼女の頬に手を当てこちらを向かせます。唇を近付けるとそっと目を閉じて長い睫毛が小さく震えました。

「ふあっ、」
何度も角度を変えて口付けるとヒメ様も懸命に返して下さいます。心が満たされていくのが自分で分かりました。気が済むまでキスをして彼女の唇を解放しました。

「わたしばっかりだと思ってました。」
「何がです?」
「わたしばっかりノボリさんのこと好きなんだも思ってました。」
「まさか。ご覧の通りお客様にさえ嫉妬してしまうのですよ?」
「へへ、今すっごく嬉しいです。」

どうやら私も貴女ももう救いようがない程に溺れ切っているのでしょうね。

doating.

「仲直りしたー?そろそろ開けるよー?」
「「!?」」







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悠様から頂いた、嫉妬→甘々のキリリクでしたー!
resにも書きましたが、個人的にも大好物な設定だったので思ったより長くなってしまいましたwリクありがとうございました!気に入って頂けると嬉しいですー(*´∀`*)



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