愛する貴女へ


「もうすぐヒメの誕生日でございますね。」
「覚えててくれて嬉しいです。」
「当然のことでございます。折角休みも取りましたしどこかへ出掛けますか?」
「うーん、お出掛けよりもおうちでゆっくりしたいです。」

なんと慎ましやかなんでしょうか!
では家でゆっくりと過ごすことに致しましょう。その代わり条件がございます。

「ではその日は一日ヒメは何もしないで下さいまし。」
「?」
「私が全て致します。」
「え?私は一緒に居られたらそれで良いですよ?」
「いつも頑張って下さるヒメを労わりたいのです。駄目でございますか...?」
「う、あ、お、お願い、します。」

私がこうやって頼むとヒメが断れないのは存じておりました。確信犯であるずるい恋人の私をお許し下さいまし。クダリも一緒に休みを取れた筈なのですが、二人で過ごして欲しいと言いましたのでお言葉に甘えることにしました。誕生日の日が楽しみでございます。









「ヒメ、おはようございます。」
「んー...おはようございます...」
「ふふ、可愛いですねぇ。では失礼致します。」

まだ寝ぼけ眼なヒメを抱き上げてリビングへ向かいました。昨日の内に粗方の準備は出来ていたので、ヒメをソファに降ろして手早く並べます。整ったところで再度ヒメを膝の上に乗せて朝食を始めます。

「あーん、でございます。」
「あーん。」

私がスープをスプーンに乗せて運ぶとぱくりと食べる姿は小鳥のようで庇護欲をそそります。何度もそれを繰り返してゆっくりと食事を済ませました。

「次は如何致しましょうか?」
「えーと、ちょっと体がべたつくのでお風呂に入りたいです。」
「仰せのままに。」

バスタブにはヒメが好きと言っていた泡風呂を準備しました。脱衣所で私のワイシャツ一枚のヒメを脱がすのはそう時間がかかりません。恥じらいながらも私に身を任せているヒメの背中や首回りには昨日の情事の痕が色濃く残っていました。

「わ!泡風呂!」
「気に入って頂きましたか?」
「はい!すっごく!」

後ろから抱き締めて、その痕をひとつずつ指でなぞります。くすぐったそうに身を捩るので静止の意味も込めて首筋に顔を埋めました。

「はぁ、」
「どうかしましたか?」
「またカミツレ様の撮影が入るとしばらくは跡を付けられないのかと思うと溜息も出ます。」
「あー、また来月撮影があるって言ってましたもんね。」
「えぇ。その間は自重しますが終わったら覚悟して下さいまし。」
「やだ、こわーい。」

クスクスと楽しそうに笑うヒメを湯船から出して頭、体を洗って差し上げます。また湯船に浸かってしばらくしてから上がり、ヒメに服を着せて髪の毛をドライヤーで乾かします。指通りの良いさらさらした長い髪の毛はいつまで触っていても飽きることがありません。そしてまた抱き上げてリビングへ。

「今日は至れり尽くせりですー。」
「たまには良いでしょう?私としては毎日でも構いませんが。」
「だめです、毎日だったら私ノボリさんなしじゃ生きて行けなくなっちゃいます。」
「それはそれは。大変甘美で素晴らしい響きでございますね。」

私なしでは生きられないヒメ。スーパーブラボー!でございます。私としては大歓迎なのですが。
ソファでゆったりと寛いでいるヒメにそろそろプレゼントを渡しましょうか。後ろを向かせて細いシルバーチェーンのネックレスをかけました。シンプルで控えめなデザインながらもしっかりとその存在をアピールするこれはヒメによく似合うと思いました。クダリがプレゼントした可愛らしいワンピースとも相性は抜群の筈です。

「これ!頂いてもいいんですか!?」
「えぇ、是非受け取って下さい。よくお似合いですよ。」
「わ、私幸せ過ぎて死んじゃうかも...」

頬を赤く染めたヒメにひとつキスを落として、あの言葉を伝えましょう。

「お誕生日おめでとうございます。月並みな台詞かもしれませんが貴女が生まれてきて下さったことに心から感謝致します。」
「ありがとうございます。私ね、たぶんノボリさん達と会うために生まれてきたんだと思います。じゃなきゃこんな気持ちにならないですもん!」

まだ赤い頬をそのままに私を真っ直ぐに見据えて言いました。嗚呼、そうやって貴女はいつも簡単に私の心を奪い去って行くのですね。尤も奪い去って下さった心は返して頂かなくても結構です。私も貴女の心を頂戴しますから。

さて、まだ日も長いことですし存分に甘やかして差し上げましょう。そして甘やかすという名目で私が甘えるのです。ずるいとはお思いでしょうが許して下さいね?
何よりも誰よりも大切なヒメに愛を込めて。





愛する貴女へ
「私の誕生日には“プレゼントは私”を期待しておりますね。」
「へんたい!その良い笑顔を殴りたいです!」
「僕協力する!可愛いリボンでぐるぐるにしてあげるね!」
「クラウドさん助けてー!」
「ボス達そこに直りいや!」
「「はい...」」





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なゆ様から頂いたノスタルジックガール番外編で誕生日のお話でした!色々詰め込みたくて長くなってしまいましたwノスタルジックガールが一番好きと言って頂けて嬉しいです!初めての連載で試行錯誤したのでそのお言葉大変嬉しく思います(;_;)まだまだ未熟ではありますがこれからもよろしくお願いします(*´∀`*)




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