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鼻梁

「では、行って参ります。」
「行ってらっしゃい!」

まだ少し眠そうな顔をしてキバゴを腕に抱き、私を見送りに来て下さいました。私は仕事柄朝が早いのでいつも寝てて構わないと言っているのですが、ヒメは見送りたいからと言って毎朝起きて下さるのです。

「お利口に待っていて下さいまし。」
「うん!大丈夫!」
「えぇ、それから誰が訪ねて来ても決して出てはいけませんよ?私その方を殺してしまいそうですから。」

これは比喩でもなんでもなく私の本心でございました。彼女が誰かの目に触れるなど気が狂ってしまいそうです。

「わかってるってばー!お外には出ないし、ノボリ以外とは誰ともお話しない!ちゃんと一時間に一回はメールするね!」
「良い子です。」

彼女は私にとても従順でございました。とはいってもドアには私しか持っていない鍵で外からしか開けられませんし、彼女の遊び相手にと預けているキバゴは彼女が逃げないように見張る監視役、そして部屋の至るところには監視カメラを仕込んであります。彼女が逃げ出すなどとは思ってはおりませんが、私がただ心配なだけなのです。彼女がいなくなってしまえば生きる意味などないのですから。私の元からいなくなるというのであれば、その命私が断ち切って差し上げます。

「ノボリ?遅れちゃうよ?」
「えぇ、では、」

ヒメの呼びかけで我に返り、腕の時計を見るとそろそろ行かねばかいけない時間でございました。彼女の愛らしい鼻の頭に軽くキスをして別れをしました。さて、今日も帰ってきて彼女と戯れるのを楽しみに勤務に励むと致しましょう。
彼女は私の可愛い可愛い愛玩動物。



(鼻梁へのキスは愛玩の意。)

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